山域 南アルプス 仙丈ケ岳 地蔵尾根
メンバー Wan子・Yr子・Mj子・Kazu 計4名
それは、正月気分も抜け日常の生活に戻りつつある、ある日の夜から始まった。
その日は、いつものメンバーで新年会という名目での飲み会。
もちろん、たいして為になる話をするわけでもなく、くだらないバカ話で盛り上がる。
そんななか、Wan子の口からこぼれた一言が私の耳にとまった。
「仙丈ケ岳、地蔵尾根日帰りピストンへ女子3人で」っとの計画だった。
なんとなく、そのまま話を聞いていると「一緒にどうですか?」と。
女の子3人に囲まれて行く南アルプスの女王!なんて楽しそうな計画!
この時の私に断る理由があるわけもなく。
もちろん、即答で「行くっす」「参加させてください」となる。
当日、なんとなくの詳細は聞いたのだが、女の子3人と行くことくらいしか酔った私の脳みそは記憶していなかった。
後日、その話を思い出し、軽い気持ちで情報を調べ愕然とした。
往復約25km・累計標高差約2400m・予定行動時間14時間(しかも無雪期で)
更に前日の睡眠時間はナシというおまけつきだ。
うん。うん。私には絶対無理。一応、心の友であるDにも確認はした。
Dからの回答も「うん。やめときな」だった。
そこから、私は行けない理由を必死で探したのが大義名分を満たすものが見つからない。それでも、彼女達の山行計画は私の意思とは無関係に、しかも確実に進んでいった。
余談だが、大義名分が見つからない大きな理由として天気が悪い場合はゲレンデスキーが予定されていたからだった。
千丈には行きたくないが、スキーには行きたい。
この下心が私の中にある限り、私に大義名分が与えられることはないだろう。
そんな私に残されたことは当日の天気が悪いことを全力で神に祈ることくらいだった。
2024/2/17 天候 私の祈りは通じず晴れ。この世に神はいない。
16日 22:30 名古屋を出発。車での移動中はWan子からのおじさんへの配慮があり、1時間ほどの仮眠をとらせてもらった。
Dからは「もしも登れなかった時の言い訳の一つになるから絶対に前日は寝てはいけない。」と、教えてはもらってはいたのだが小心者の私は不安に耐え切れず目を閉じてしまった。
17日 2:30 柏木登山口 出発。
出だしは雪も少なくなだらか林道なのでWan子の先導でペースよく進む。
歩き出して1時間が過ぎたあたりで私はあることに気づいた。「この人たち休憩は?」
それから1時間。やっと休憩の指示がでた。
このあたりから私の中で、可愛いかったはずのWan子が鬼に見えてきた。
今思えば、そもそもこの計画を立てた時点で鬼であったことに気が付くべきだった。
月明りもない暗く長い林道は私には終わりが見えず永遠に続いている様に感じた。
それでも開けない夜はない。終わりのない林道も。東の空が少しずつ白く輝き始めたころに松峰小屋の分岐に到着した。
積雪量もこの辺りから次第に増え、斜度も急激に強くなってくる。しかもほぼ直登だ。
急登感がこの写真では伝わらいのが悔しい
目指す稜線 2700mラインの手前200mくらいの位置で完全にトレースが消える。
人様のトレースを借りておいて言う事ではないが、トレースの位置が悪くそのまま先には進めない。
一旦少し戻りなるべく傾斜の緩い場所を選んで登り返すことにした。
予想外のラッセルに多少の時間と体力は消費したが無事に稜線までは到達することができた。
稜線には乗ったがその先もまだ長い。晴れ予報だったはずの天気もそのころから徐々に悪くなり視界も急激に悪くなっていった。
時間的にも体力的にも登頂できるかはギリギリだ。撤退するべきか判断するポイントはここだった。
だが、今回私はリーダーではないので、その判断は彼女達に委ねる。
そして、出された彼女達の判断は時間の許す限り行けるところまで。
登頂できるかどうかはわからないが時間の許す限り挑戦をあきらめない。
もしも今回の山行をいつもの倶楽部のメンバーで挑戦していたなら、トレースがなくなった時点で考える間もなく撤退していただろう。
彼女たちの熱いスピリットを当然だが私も含め倶楽部のポンコツ共にも見習ってもらいたいと心底思った瞬間だった。
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