2024年2月26日月曜日

錫杖岳 前衛壁 3ルンぜ


 期日 2024/02/24(土)

山域 北アルプス 錫杖岳 前衛壁 3ルンぜ

メンバー Kazu , くま , サトちゃん , タカ 計4名

 前週末に行った地獄尾根の疲れがなかなか抜けず、今週末は勝手に完全レスト日として嫁との攻防を制しソファーから一歩たりとも動かないで過ごせるかどうかという無謀なチャレンジをしてみようと思っていた。

 しかし、気がつけば世間は3連休。天気予報を見ると土曜日はよさそうだ。

私のソファーから一歩も動かないは日曜日にチャレンジすることとし土曜日はどこかに日帰りで山行に行くことにした。

 それでも3連休を控えた週末に急に山行を計画したところで皆すでに予定は埋まっているかも?実は密かに錫杖に行きたいと考えていたのでのパートナーは必要だ。

とりあえず、暇そうな連中に連絡してみることに、そして集まったのが今回のメンバーだ。

タカは暇人なので秒で参加表明。

クマはいろいろ不安でギリギリまで迷った挙句参加。

サトちゃんはメンバーみて仕方がないので保護者で参加してくれた。

昨シーズンはタイミングが合わなく2年ぶりの冬の錫杖だ。

前回はいろいろあって敗退しているので今回はできればトップアウトしたいと密かに思っていた。

2024/02/24

深夜1時にクマ・タカに迎えに来てもらい出発。

4時過ぎに中尾高原の駐車場でサトちゃんと合流。

4時30分 出発。

雪が少ない。

リヤ谷の登山道も雪は少なく、トレースもあり順調に進む。

始めの渡渉点の水量はかなり多く感じたが、誰もドボンすることなく無事に渡れた。

渡渉点を通過し短い急登をこなすとなだらかな斜面になりそのまま少し進むと本日登攀する錫杖の前衛壁が見えてくる。

中央に見える顕著なコルが3ルンゼ

この時点では天候は晴天。白と青のコントラストの中央に浮かぶ錫杖からは荘厳さを感じずにはいられなかった。

夏場は錫杖沢の出会いから沢沿いに進むのだが、冬場は雪崩のこともあり岩舎まで行き樹林帯を抜け3ルンゼに取り付く。

雪が少なく岩舎手前でも渡渉するはめになった。


岩舎手前の渡渉

ここで、クマがドボンする。
一瞬だったので何とか靴の中を濡らさずにすんだ。

渡渉すれば岩舎は目の前だった。

岩舎には見覚えのあるテントが1つ。知り合いだった。
前日に3ルンゼに行ったそうだが状況が悪くていろいろあったようだ。

岩舎前で

彼らに前日の情報もらいながら場所も少し借りて登攀準備をする。

この気温と彼らからもらった情報で3ルンゼのコンディションが最悪なことは容易に想像できた。

3ルンゼは各パートともに初めにチョックストーンの岩場を越えあとは雪壁を登るというスタイルになる。

氷がしっかりとついてさえいればそこまで難しいルートではないのだが氷が少ないとなかなか手ごわいルートになる。

サトちゃんは「だから氷ないって言ったでしょ」取り付きみて記念写真撮って帰りましょう。と言い。クマ・タカもその言葉に乗っかる。

私もその場の空気に合わせ「まあ、行くだけ行ってダメなら帰ろう」とは言ってみたが実は2年前の敗退の事もあって今回は前回と同様の条件下でトライしトップアウトしたかったのが本音であった。

仮に敗退になったとしてもチャレンジだけはしたかった。

そんな私の気持ちを汲んでか、とりあえずは行ってみることになった。

岩舎からはの登りはきつい

今回は4人なので2パティーに分けトライ。編成は私とクマ。サトちゃんとタカだ。
氷は少ないどころか全くない。雪もグズグズで悪そうだ。

リードは少しばかり厳しい戦いになりそうなので今回はザックをパーティーで1つにし、フォローが背負うことにした。

おかげで私は取り付きまでもずいぶん楽をさせてもらえた。

取り付き手前の最後のセーフティーゾーンで腹ごしらえ

8:30 3ルンゼ 登攀スタート

少ないとはいえF1はしっかり埋まって見えた。

とりあえずはロープは出さずF1を進む。この時点ではまだ雪もしまっていた。

下から見ると雪はしっかりあるように見えたのだがところどころ大きく口を開けていた。

F2の少し手前から露岩部が多くなりロープを出すことに。

私が少々ルンゼ内を突っ込みすぎたためF2の抜け口でいきなり緊張を要する登攀になってしまった。

サトちゃんはそんな私を見てか上手く回り込み弱点を突いた良いルート取りをしていた。

F2の抜け口で思わず声が出る。その声とともに私のスイッチが入ったようだ。

そのまま少し雪壁を上がり終了点に。クマをフォローする。

F3 ここが今回の核心だったと思う。

氷の全くない壁を登る。残置ハーケンはあるが信頼度は低い。
カムを使えそうな場所もない。

くまはそれを見て「ここ行くんすか?」「ルート違ってませんか?」を壊れた昔のレコード盤のように繰り返す。

それでも、ここしか登れそうな場所は無いのでとりあえず取り付いてみることにした。

岩は一枚のように感じるが、上下二段になっていて下部の岩から上部の岩に移る場所が厳しかった。

乗越部分には氷もなく雪もうっすらあるだけでバイルを打ち込もうと振っても岩に弾かれ鈍い音を出すだけだ。その音を聞くたびに絶望感を感じた。

F3 出だし核心

なんとかバイルのかかる場所を見つけアイゼンは額のシワほどの溝に置き手足にかかる力をできる限りすべてに全てに分散しどれか一つでも外れないことを祈るような気持ちで身体を上に引き上げた。

なんとか岩部分を越え少し雪壁を進むと終了点がある。

なんとも心もとない終了点だが少し補強してフォローを迎えるためコールした。

クマから「登ります」のコールはあったもののロープは緩んでこない。

ガリガリとアイゼンで岩をかく音は聞こえるのだが、、、。

しばらく、頑張っていたようだが「登れません」と声が聞こえた。

いつもの私ならここで辞めていたかもしれないが渋いクライミングをこなしたばかりでアドレナリンが大量に出ていたのだろうか?今現状で辞めるという選択肢は許さなかった。

初めての錫杖。条件は最悪と言ってもいい。しかも本格的な冬季登攀は初めてのクマ。

私からのアドバイスは「いいから登ってこい」「気合で登れ」「A0でもなんでもしろ」だ。

もう、アドバイスというよりも罵声に近い。

こんなアドバイスだけで登らされるクマは今思えばかわいそうだ。今思えば。

雪壁の端から見えたクマの顔は少し老けてみえた。

終了点でセルフを取りクマの口から出た最初の言葉は「頭おかしくないっすか?」だった。

後続のサトちゃん達も気になる。この日、我々の後は誰もいないので少し待ちながら休憩することにした。

暫くすると予想はしていたが「無理~~」っというコールがした。

クマのロープを外し別パーティーのサトちゃんをフォローで上げた。

フォローで登ってくるサトちゃんを見ていたが技術的には問題ないように見えた。

ただ、ただメンタルの問題なのだろう。

F2をリードしていたサトちゃんとF3で心折れたサトちゃんは別人のようだったがこっちが通常のサトちゃんだということを私はよく知っている。

タカの事はサトちゃんに任せて私とクマは先に進むことにする。

いつも、ニコニコして笑顔を絶やさないクマなのだが、この辺りからクマは笑顔を見せなくなった。

F3の終了点からそのままF4に繋いでもよいとは思うがF4の基部に支点が見えたためそこまで移動してから取り付くことにした。

そこまではクマがリードした。

7~8mの移動で簡単そうな場所だが、この辺りから雪が腐ってきて意外と悪く感じた。

F4はチムニー内をくぐって抜けたあとは毎度の雪壁を少し登れば終了だ。

ここも氷があればなんてことなく登れるのだろうが氷は無い。

今までの登攀で抜け口の状況も気になる。それでも行ってみないと分からないので取り付いた。

F4チムニー内


出口は悪かったが、穴から上半身を出しそこからいっぱいで手を伸ばした場所にはバイルはよくきいてくれた。

F3に比べればずいぶん楽な登攀に感じた私はサトちゃんたちのことは置いていくことにした。

F5の取り付きに移動しようとしたとき、サトちゃんから「帰る~」「降りる~」の敗退コールがあった。

私は当然止める気はないのでクマの悲しそうな顔は見ないふりをしてF5の取り付きに進んだ。

F3以降、クマは身体のあちこちが「ツル」アピールも忘れずに私にしていたが聞こえないふりをしていたことは秘密だ。

後で聞いたのだが「ツリ」止めの漢方薬を私の知らないところで3度も飲んでいたそうだ。

通常このF5もルンゼ左側の氷を登るのだが氷があるのは抜け口から2mほど残っているだけだった。

ルンゼ右の悪い岩から上部にあるチョックストーンに乗りルンゼ左に残った氷に取り付くようにルートを選んだ。

この残った氷は厚みもあり今回初めてスクリューを使った。

ただ、落ちればそこにある氷ごと全部落ちそうな気はしたが、それでも有るか無いかで気持ち的にはずいぶん楽になる。

すでに満身創痍で力尽きそうなクマに「ここが最後のクライミングだ。」と激を飛ばした。

最後の力を振り絞って上がってきたクマは次にF6があることを知って絶望していた。

F6は人工登攀になるので私はクライミングは最後というつもりで言ったのだが、、、。

すまん。

F6の人工部分をこなし雪壁に取り付く。人工部分より雪壁に乗り移る場所の雪がクズクズで悪い。足を置くと崩れていく。

崩れる足元に注意しながら30m先に見えるコルを目指す。

いよいよ最後だ。

コルに到着し灌木で支点を作りクマを迎える。

最後の雪壁を登るクマの顔は泣いている様にも笑っている様にもみえた。

これが本当に最後の雪壁だ

無事にすべてのピッチを終了し二人でコルに到着したのは13:55だった。

F6終了点にたどり着いたクマ。いい顔してるよw

クマが撮ってくれたんで私も

予報に反しガス覆われ視界が悪い。コルから下をのぞき込むと地獄への入口に見えた。

サトちゃんたちが下で私たちの帰りを待っているのであまりゆっくりはしていられない。

クマとお互いの健闘を称えあい少しだけ休憩して下山の準備を始めた。

下山は懸垂で一気に下降する。


数回の懸垂をするとF1の基部にサトちゃんとタカの姿が見えた。

私はてっきり岩舎で待っていてくれると思っていたのだが最後の懸垂ロープを私たちのために残してその場で待っていてくれていたようだ。2時間も。

無事にサトちゃんたちと合流し岩舎へ戻り大休止をとり下山の準備をした。

サトちゃんは年末におしりの手術をして以来まともな登山をしていない。

2週間前にアイスクライミングに行って30分ほど歩いただけで今シーズンアイゼンを履いたのが2回めなのに前回より前に進んだので良しとすると言っていた。

なんて潔い男なんだ!。そんな状態でも私に付き合ってくれるサトちゃんが私は大好きだ。

タカは初めての冬の錫杖に来られことで満足しているようだ。

次は自身の力でチャレンジしてほしいものだ。

そしてクマは、、、。

とても辛く苦しい登攀だったがよい経験ができた。などとそれっぽい言葉を言ってはいたが本音はどうも違っていたようだ。

サトちゃんとタカにどれだけ酷い仕打ちにあったかを私がいることを気にもせず熱く語っていた。その内容に関してはちょっとここには書きたくないw。

そのままにしておくといつまでもクマが私の悪口を言い続けそうなので下山することにした。

岩舎から2時間ほどで駐車場に戻った。今日はヘッデン下山は免れた。

サトちゃんとはここで別れ、帰路に就いた。

高山でクマおすすめの風呂屋によって王将で飯を食った。2人から飲んでも良いとの許可を得たので私だけビールを飲ませてもらった。

私は久しぶりに充実し、満足感を得られた山行になった。
F3を越えてからはもうどこを登っても落ちなる気がしなかった。

Dが4年に1度くらいあるという「今日は岩が小さく見える」というゾーンに私も今回初めて入った気がしたw。

たいそうな書き方をしたが所詮は錫杖の中では初級に位置付けされているルートだ。
それでも今回のような悪条件下でトップアウトできたことはうれしく思う。

今回連れて行ったタカとクマが来年は2人でトライしてくれることを願いつつ、今回の記録はこの辺りで〆るとしょう。

おつかれさん

追伸

 書くまでもない事だとは思うが翌日の日曜日に私がソファーに座っていたのはほんの一瞬だった。










































































2024年2月20日火曜日

仙丈ケ岳 地蔵尾根 



 期日 2024/02/17 

山域 南アルプス 仙丈ケ岳 地蔵尾根

メンバー Wan子・Yr子・Mj子・Kazu 計4名


 それは、正月気分も抜け日常の生活に戻りつつある、ある日の夜から始まった。

その日は、いつものメンバーで新年会という名目での飲み会。

もちろん、たいして為になる話をするわけでもなく、くだらないバカ話で盛り上がる。

そんななか、Wan子の口からこぼれた一言が私の耳にとまった。

「仙丈ケ岳、地蔵尾根日帰りピストンへ女子3人で」っとの計画だった。

なんとなく、そのまま話を聞いていると「一緒にどうですか?」と。

女の子3人に囲まれて行く南アルプスの女王!なんて楽しそうな計画!

この時の私に断る理由があるわけもなく。

もちろん、即答で「行くっす」「参加させてください」となる。

当日、なんとなくの詳細は聞いたのだが、女の子3人と行くことくらいしか酔った私の脳みそは記憶していなかった。

後日、その話を思い出し、軽い気持ちで情報を調べ愕然とした。

往復約25km・累計標高差約2400m・予定行動時間14時間(しかも無雪期で)

更に前日の睡眠時間はナシというおまけつきだ。

うん。うん。私には絶対無理。一応、心の友であるDにも確認はした。

Dからの回答も「うん。やめときな」だった。

 そこから、私は行けない理由を必死で探したのが大義名分を満たすものが見つからない。それでも、彼女達の山行計画は私の意思とは無関係に、しかも確実に進んでいった。

 余談だが、大義名分が見つからない大きな理由として天気が悪い場合はゲレンデスキーが予定されていたからだった。

千丈には行きたくないが、スキーには行きたい。

この下心が私の中にある限り、私に大義名分が与えられることはないだろう。

そんな私に残されたことは当日の天気が悪いことを全力で神に祈ることくらいだった。

2024/2/17 天候 私の祈りは通じず晴れ。この世に神はいない。

 16日 22:30 名古屋を出発。車での移動中はWan子からのおじさんへの配慮があり、1時間ほどの仮眠をとらせてもらった。

 Dからは「もしも登れなかった時の言い訳の一つになるから絶対に前日は寝てはいけない。」と、教えてはもらってはいたのだが小心者の私は不安に耐え切れず目を閉じてしまった。

 17日 2:30 柏木登山口 出発。

出だしは雪も少なくなだらか林道なのでWan子の先導でペースよく進む。

歩き出して1時間が過ぎたあたりで私はあることに気づいた。「この人たち休憩は?」

それから1時間。やっと休憩の指示がでた。

このあたりから私の中で、可愛いかったはずのWan子が鬼に見えてきた。

今思えば、そもそもこの計画を立てた時点で鬼であったことに気が付くべきだった。

月明りもない暗く長い林道は私には終わりが見えず永遠に続いている様に感じた。

それでも開けない夜はない。終わりのない林道も。東の空が少しずつ白く輝き始めたころに松峰小屋の分岐に到着した。


6:20 松峰小屋分岐

 ここから先は大小いくつものピークを越え進む。先ず目指すは2700mあたりの稜線。

積雪量もこの辺りから次第に増え、斜度も急激に強くなってくる。しかもほぼ直登だ。

急登感がこの写真では伝わらいのが悔しい


 薄らとトレースはあるが、場所によっては膝下ほどのラッセルも交えながら進む。

目指す稜線 2700mラインの手前200mくらいの位置で完全にトレースが消える。 


 人様のトレースを借りておいて言う事ではないが、トレースの位置が悪くそのまま先には進めない。

一旦少し戻りなるべく傾斜の緩い場所を選んで登り返すことにした。

予想外のラッセルに多少の時間と体力は消費したが無事に稜線までは到達することができた。

稜線には乗ったがその先もまだ長い。晴れ予報だったはずの天気もそのころから徐々に悪くなり視界も急激に悪くなっていった。

時間的にも体力的にも登頂できるかはギリギリだ。撤退するべきか判断するポイントはここだった。

だが、今回私はリーダーではないので、その判断は彼女達に委ねる。

そして、出された彼女達の判断は時間の許す限り行けるところまで。

登頂できるかどうかはわからないが時間の許す限り挑戦をあきらめない。

もしも今回の山行をいつもの倶楽部のメンバーで挑戦していたなら、トレースがなくなった時点で考える間もなく撤退していただろう。

彼女たちの熱いスピリットを当然だが私も含め倶楽部のポンコツ共にも見習ってもらいたいと心底思った瞬間だった。


地蔵尾根は一般道のはずなのだが、稜線上はルートを示す物は見当たらなかった。
視界の悪い中、ルーファイしながら先へ進む。

私は進みながらも心のどこかで撤退のタイミングを考えていた。きっと彼女達も。

そう思っていたのだが、ここからMj子が突如豹変した。

自ら先頭を志願しガンガン攻める。もう誰も彼女を止められない。
その後ろ姿には必ず登頂するという強い意志を感じた。

後続を気にしてこちらを振り返って確認してくれてはいるが、私には「早く来い!」という圧力にしか見えなかった。
(この意見については下山時に確認済)本人は否定していたが他2名は私に同意。

それでも、その勢いと圧力に引かれパーティーは前進する。

偽ピークをあと2つ越えれば、女王のもとへ。そう信じて。



、、、、、。


厳冬期 仙丈ケ岳 3033m (地蔵尾根)

今年に限れば内容的には雪も少なく技術的な難易度は低いのだろう。
それでも、この長いルートを多少とはいえラッセルをこなしONE DAYでやり切った感動はある。

ついでに言うと、私に限っては恥ずかしながら、仙丈ケ岳は初登頂。

今回のお誘いがなければこの場所に来ることは無かったと思う。

山行前は天気が悪くなり、山行が中止になって行先が「ほのぼのゲレンデスキー」になることを切に願っていたのだが、結果的にはここに来られて本当によかったと思う。と同時にここへは二度と来ることはないだろうと来られたこと以上に強く思ったことは私だけの秘密だ。

山頂は風も強く、飛んでくる氷雪は顔を突く。

証拠写真を撮り、余韻に浸る事もなく帰路に。

ホワイトアウト気味の天候の中、方角を確認しながら自分達のトレースを探す。
山頂から2700m地点までは尾根が広く分かりにくい。

風も強く、時間も気になるところだが、ここは焦らず、しっかりと確認し進むべき方角に向かった。



 無事、安全圏まで戻り、登頂の喜びを分かち合う。

出し切った感がw

しかし、本当の地獄はここからだった。

2700m地点から柏木登山口までおおよそ、6時間。

それでも、帰らないわけにはいかないので惰性で歩く。
下山だけだと思いきや、当然、登り返しが疲れた身体を更に追い込む。

Mj子の電池が切れた感がすごい。
Yr子はもう何も話さない。話したくない。

Wan子は?なぜかここにきて、復活する。
ついていかないと怒られそうな勢いなので必死でついていく。ついてはいけないが。

「まだ~」、「あとどれくらい~」 もう、私の口からはこの言葉しか出ない。

そして、そのうち日も暮れる。


ごまかし、ごまかしでなんとか駐車場にたどり着く。時刻は19:40分
実に、行動時間17時間。ホントよく頑張った。特に私が。

駐車場に戻ると、突然ハッピーバースデイを歌わさせられる。
せっかくなので全力で歌うつもりだったのだが、疲労で声がでない。

駒ヶ根まで戻り、ギリギリで温泉に滑り込み前日のお昼にDと行った気がするガストで遅めの夕食を食べ帰路に着いた。

Mj子が車の中で「今日の山行で余分なお肉が落ちた気がする。」っと言っていたがそれは気のせいなのでご心配なく。と、しっかりと伝えておいた。

Wan子、帰りの運転ありがとう。そしてお疲れ様でした。
耐え切れなくなり途中意識不明になった私をお許しください。

 
 久しぶりの歩きの登山は長い、とにかく長かった。時間も尾根も林道も行きも帰りも。

山行前は若い彼女達に着いて行くことが出来ず、私のせいで敗退になる事が本当に不安だった。それは、こんな私にも「ノミ」ほどではあるがプライドがあるからだ。

今でも無事に達成できた事にほっとしている。

結果、「まだまだ若い者には負けてない」などと、じじくさい言葉を最後に今回の山行記録を〆させてもらう。













































錫杖岳 前衛壁 3ルンぜ

 期日 2024/02/24(土) 山域 北アルプス 錫杖岳 前衛壁 3ルンぜ メンバー Kazu , くま , サトちゃん , タカ 計4名  前週末に行った地獄尾根の疲れがなかなか抜けず、今週末は勝手に完全レスト日として嫁との攻防を制しソファーから一歩たりとも動かないで過ごせ...