2024年5月8日水曜日

残雪期 奥穂高南稜〜北穂高縦走


 期日 2024/5/3~5/5

山域 北アルプス 奥穂高岳(南稜)~北穂高岳

メンバー かず・たか・まぢこ 計3名

~PROLOGUE~

4月の中旬に肉山とまぢこの3人で西穂高西尾根に行くことに。

まぢこ、残雪期 穂高アルパインデビューだ。

西穂高西尾根はアルパインと呼ぶには少し物足りないルートだが一般道とはやはり違う。

ルーファイ含めそれなりの技術は要求される。特にこの時期は雪の残り具合で難易度がずいぶん左右される。

昨今の温暖化の影響かどうかは私にはわからないが北アルプスの雪も少なく前半は、ほぼ藪漕ぎになってしまったが森林限界を越えるころにはそれなりに雪はあった。

全装でのアルパインは私としても久しぶりで少々辛かったのだが、やはり私のアルパインの原点はこのスタイルだと改めて感じられた良い山行になった。

2024年4月 某日 ~                             

 今年も春の大型連休の時期がやってきた。いわゆるゴールデンウィークというやつだ。

今年は新会員のまぢこに残雪期穂高アルパインをさせたく行先をいろいろ考える。

順当に考えれば先ずは北穂東稜辺りが選択肢に浮かんでくる。

1日目 上高地~涸沢BC
2日目 涸沢BC~東稜から北穂。北穂~奥穂縦走~涸沢BC
3日目 涸沢BC~上高地

西穂高西尾根に行く前はこんな感じだろうか?っと思ってはいたのだが西尾根を終えたあとでは少し疑問を感じる部分があり計画を見直した。

最近の流行りのスタイルは荷重を減らしスピード重視。いわゆる「Light&Fast」だ。

ついでなのでここで「Light&Fast」について私なりの見解を述べてみることにする。

つまりは荷物を軽くしてスピードを上げ危険個所にいる時間を短くすることによりリスクを減らすという考え方だ。その反面で何かトラブルなどのイレギュラーには弱くそういう面でのリスクは高くなってしまう。

もちろん、この考え方には賛同できる。

 少し違う話かもしれないが、私の思うアルパインは全装で抜けることに意味があると思っている。

 装備の内容を精査し軽量化に努めることは当然の事だがBCありきで計画をするのは少し違う気がする。同じことのように聞こえるが、初めからBCを基準に計画するのか、計画した結果がBCなのかが私にとって重要なことなのだ。ルートによってはBCを作れないようなルートも沢山ある。それにそんなルートの方が魅力的なルートも多い。

要はBCありきのアルパインばかりやってるとルートの選択肢が減り、やれる幅が狭くなり肝心な時に登れなくなってしまうのではないだろうか。

少し前置きが長くなってしまったが、そんなわけで今回のGWの山行は全装でチャレンジする事にした。2人には少し辛い山行になるかもしれないが、きっと今後につながる良い経験になると信じてチャレンジしてほしい。

計画の概要はこうだ。

1日目 上高地〜岳沢〜南稜〜奥穂高〜穂高岳山荘CP 

2日目 穂高岳山荘CP 〜北穂高〜南岳山荘CP

3日目 南岳山荘CP〜横尾本谷〜上高地

さて、今回の山行はどうなることか?

5/2 21:30 集合・出発 

5/3 5:30 沢渡第2駐車場〜6:00 上高地出発。

沢渡からタクシーで上高地入り。上高地は予想より肌寒かった。

河童橋にてお約束の写真

 登山届けを提出し岳沢に向かって出発する。岳沢までは約2時間の距離だ。

岳沢までは特に面白いことも起こらず予定通りに着く。


岳沢小屋の前で準備をし9:00 南稜の取り付きに向かう。

私の記憶では取り付き(最初の滝)まではすぐの記憶だったが実際には1時間ほどかかった。

やはり私の記憶はあてになら無いことを再度確認できた。

取り付きへ

 取り付きまでは写真で見ても大した斜面には見え無いのだが実際に歩いてみると意外に急登だ。何度か立ち止まり息を整え先に進む。
 雪渓と岩壁の間は少し開いていて乗り移る場所を探す。左側の岩壁に乗り込んで少し上の方から回り込んでスタート地点に向かう。

10:00 南稜スタート。
 まぢこがアイゼンでの登攀にまだあまり慣れてい無いこともあるがロープの使い方や支点の作り方なども見て経験して欲しいので積極的にロープを出していくことにした。

20㌔超えの荷物での登攀はシビレルw

 始めの岩場を越え、草付きの斜面を少し登ると雪渓が出てきた。
天気がよく気温も高いので雪の状態に不安があったがこの時点ではまだマシだった。


この雪渓を登り切った場所に小滝が更に進むと5mほどの岩壁がありそれを越えた所からルートは3つに分かれる。

残雪期は右にルートを取ることが多いようだが今回右側のルートは雪渓が繋がっておらず藪漕ぎになりそうな感じだったので中央のルートを進むことにした。

雪渓は所々割れている場所もあったが正面のスラブ岩壁までそれなりには繋がっていた。

下部スラブの岩壁のトラバース

 下部スラブを大きく右にトラバースして岩場に取り付きそこから2ピッチほどの岩登りになる。初めの出だしが滝沢側に身体を出した所からの登攀になる。そのまま少し上がれば尾根の芯に乗ることができる。出だしの岩を越え少し左に戻るようなイメージで次の岩にとりつくのだがダケカンバに捕まり離陸しにくい。なんとかダケカンバをやり過ごして離陸。ホッとしたのも束の間に今度はロープが出てこない。そういえばこのピッチはまぢこがビレイしていた。

 アルパインではビレイヤーの位置からリードが見えなくなることはよくある事なのでロープが出ていく微妙な感覚を感じ取りロープを送るのだが経験が少ないまぢこにはそこまでの要求はまだしないでおこうと思いロープを出すタイミングを声に出しながらその先に進んだのだが、よく考えてみればまぢこのフォローをするためにタカをサードに置いているのに全く役に立っていない事に気づいた。
タカにロープの送りが悪いことを告げると「かずさんのまぢこちゃんへの指示が優しくて羨ましかった。もし自分なら罵倒されているとこですよ」などと言い。私の思いが全く伝わっていない事を実感した。

各ピッチともに中間支点はそれなりにあるが終了点は見当たらなかった。

2ピッチの登攀を終え少し進むと目の前にチムニーが現れる。チムニーは中に入ると階段上になっていてそのまま進むことができる。チムニーを抜けるといよいよトリコニーの基部だ。
トリコニーの1峰は出だしを滝沢側から巻いて後は岩稜通しで進めばネットなどでよく見かける映えポイントに出る。

なんかちょっとカッコよく見えるのがムカつくw

 1峰を越え2峰の基部へ向かうためにトラバースする。
この時点で雪はかなり腐っていた。それでも場所的に影にはなっているので大丈夫だろうと何の根拠もないまま1歩踏み出す。足元から丸ごと崩れる。危うく滑落するところだった。
根雪から腐っている。なので崩れると地面まで全部落ちてしまうのだ。

シャレにならないのでフィックスを張る

 雪の悪さも勿論だが全装での登攀も影響して思うように進めずトリコニーを超えた時点で17時を過ぎていた。なんとか穂高岳山荘CPまで辿り着きたいのだが時間的に厳しくなってきた。
元々、タイムリミット時はどこか適当な場所でビバークするつもりでいたので焦りは感じなかった。
 ここから先はビバーク適地を探しながら先に進んだのだがなかなか見付からず日没が迫ってきた。私の記憶ではこの辺りに適地があったはずなのだが、そこは私の記憶なので全くあてになら無いことは言うまでもないこと。多分、気づか無い間に過ぎてしまっていたのかルートがズレていたかなのだろう。

 まぢこがそろそろ精神的に限界に近い感じになってきていたのか?どう見ても適地とは言えない場所を見て「ここならビバーク出来そうじゃないですか?」と言う。
 「テントを使わずツェルトで座って一晩過ごすならここでもいいけど」と、返すとそれは嫌だと言う。横になりたいとも言う。外でご飯は寒いとも言う。
「少し掘ればなんとかなりませんか?」とも言う。

 私からすればそんなに掘ることの出来る時間と労力があるのならCPまで行ったほうが良いのでは?っと思った。そんな問答を繰り返したのち、「とりあえず、CPを目指し先に進みこの先で適地があればビバークしよう」と、まぢこを言いくるめ先に進む事にした。

 タカも口に出すと私に叱られるし、先輩としてのプライドもあるのか口には出さなかったがかなり辛そうには見えた。勿論私も。

 目の前の小ピークを越え少し先をみると適地に見える場所が。まぢこと一緒に喜びそうになるが雪面が水平なのは間違いないが問題はリッジになっていないか?、幅があるかだ。気持ちを抑えて、それでも少しの期待を胸に、まぢこの切なる思いを背中に感じながら近づいていく。
 
 神よ。どうか我々に安らぎの場所を、、、w。

この世に神はいないと先日の千丈で知ったはずなのだが、まさかこんなことが起こるとは

そこには素晴らしい安らぎの場所があった。

日没ギリギリでビバーク出来た。

慌てて整地を済ましテントを張る。中に入って少し落ち着いてから、まぢこに食事の準備をしてもらう。待っている時にこうなる事を予想していたのに岳沢小屋でビールを買ってこなかった事を死ぬほど後悔した。すでに20㌔を超えた荷物にビール1缶増えたところで大差はないのに。


まぢこの初ビビーは素晴らしい場所とロケーションだった。

ビールはないが酒は少しだけ持っていたので3人で分けて呑み、その日は疲れもあって早々に就寝した。

5/4  4:00 起床(3時に起床予定だったがなぜか目覚ましが4時にw)
 昨晩の鍋の残りにうどんを入れて朝食にした。

5:45 出発。

小ピークをいくつか越えれば奥穂の山頂が視界に入る。頭まで最後の雪原に差し掛かる。

朝一の雪はしっかり締まっていて気持ちが良い






最後の雪原

山頂目前

6:54 奥穂高岳3190m 登頂


山頂で少しの間、景色を眺め、写真を撮り、思い思いに過ごすし山頂を後にした。

山荘前の最後の下り。ガイドPTがロープ張っていて混雑していた。

8:30 穂高岳山荘到着。のんびり休憩。

 本日の予定は大キレットを越え南岳まで。しかし、すでに前日から予定に遅れが出ていることもあり、一先ず北穂まで行ってからその先の判断をすることにした。

 とはいえ、一応この時点では大キレットを越えられると思っていた。
 まさに知らぬが仏である。

 余談だが、今回の山行がタカと2人だったらこの時点でザイデンから涸沢に下山し、春の涸沢リゾート満喫プランに変更していた可能性はかなり高かったと思う。

9:30 北穂高に向け出発。
 
涸沢岳への登り返しは雪が全くないためアイゼンを外す。

穂高岳山荘常駐の警備隊の方が話しかけてきてくれたので北穂までの状況を聞いてみると雪は少ないが所々残っていて、それがなかなかに悪いという事だった。

涸沢岳に向かっているとき、この状況なら多少雪があっても3時間もあれば北穂まで抜けられるだろうと高を括っていた。

涸沢岳に向かう

 涸沢岳山頂はスルーして先に進む。

いきなり急な下降で鎖場が続くのだが雪解け直ぐなのでか浮石も多く足元も悪い。

涸沢岳直下の下り

 少し下ると雪が出てきた。アイゼンなしでも行けなくはなさそうだが昨日の事もあるので少し慎重になりアイゼンを付けた。結果は正解だった。


 涸沢岳から最低部のコルまで一気に200mほど下降する。
一部雪壁の状況が悪すぎて懸垂で下降した。
 
 何度も書いているが本当に雪が悪い。
特にトラバースには神経を使う。トラバースが多い分、昨日の南稜より神経が磨り減る。

 そんな私の思いも知らずか。タカもまぢこも2人して昨日よりは精神的に楽だという。

それは、君たちが私を生贄にして安全を確認してから雪面に乗っているからだということを忘れないでほしいw

 
最低部のコル直前

それでも天気は最高でそこから見える景色も抜群だ。

すでに日焼けが酷い。しかし下山後仕事に戻った時に「この人は全力で遊んでるんだな」と思われるためにも日焼け+サングラスの痕は必須だ。


適当に休憩をはさみアイゼンを脱いだり履いたりを繰り返しながら北穂沢のコルを目指す。

そのまましばらく進むと北穂側からのパーティーが見えた。
かなりの人数だが、複数パーティーのようだ。

タイミングの悪いことに割と大きな雪渓のトラバース部分でのすれ違いになってしまった。
相手のほうが先にロープの準備をしていたので待つことにした。
6名ほどいたのでしばらく待ちだなっと思っていた。

某大学の山岳部の子たちだった。なかなか気持ちの良い連中で好感がもてた。
女の子がリードしてロープをフィックスしていた。
偉そうにいうつもりは無いがしっかりとした技術で見ていても安心だった。

リードしてるなか後方にいた男子部員はスナック菓子をボリボリ食べていてそれを見た私が「緊張感のない奴だw」と言ったら、まぢこに「かずさんのあくびよりはましですね」っと返された。アルパイン技術の向上よりも先に、まぢこはどんどん雑な女になっていくのだ。

フィックスを張った後、我々に「このロープでよければ先に使って行ってください。」と
ありがたく使わせてもらい先に進んだ。ありがとうございました。

感謝

ついでに彼らにこの先の状況を聴き先に進んだ。2か所ほどロープを出したらしい。

上の写真の岩峰のトップに出るとその先の全景が見える。
そこから見る限り雪のルンゼは残り2か所。おそらくはそこが最後の核心部になるだろう。

予想どおり腐った雪となぜか氷化した斜面をトラバースしながら上部に向かう。

当然フィックスを張る

最後のトラバースは安定していた。

この写真の先が北穂沢のコルだ。


コルに到着したのは15:20。結局6時間もかかってしまった。

 この日は北穂高小屋のCPで幕営するつもりだったので北穂へ向かい足を踏みだす。
ん?北穂小屋?涸沢BCでダメなの?そんな疑問が私の頭に浮かぶ。
その場合北穂の山頂は踏めないが。一旦足を止め振り返り2人に確認する。

2人とも実はそう思っていたらしい。

まぢこはこの時間ならまだ涸沢で生ビール間に合います。っと。
基準はそこか?w

そうと決まれば北穂沢をダッシュで降りる。生ビールに間に合うために。

疲労感はあったが生ビールだけを心の支えに下山する

1時間ほどで涸沢に到着。人間、欲求を満たすためなら思いがけない力を発揮する。

無事涸沢に

タカと二人で幕営の準備をしておくのでまぢこには受付をお願いした。
暫くすると気の利くまぢこは水も汲んで帰ってきた。

「あれ?わたしテントの札消えました」
そこから、3人でテント札遭難救助が始まる。

探してはみたもののそう簡単に見つかるはずもなく。っというよりもビールが飲みたい気持ちが強すぎて早々に捜索活動をあきらめビールをのんだ。

テントに戻る際にまぢこが小屋に届いていないか確認しに行った。

私とタカは先にテントに戻った。しばらくするとまぢこが札を手に帰ってきた。

「見つかりました!」「七不思議です。」「また七不思議が増えました。」
まぢこはなにかしら都合の悪いことが起こると七不思議として処理しようとする癖がある。

実は、昨晩もそこまで寒くはなかったはずなのだが夜半から風が強くなりその辺りから急に寒くなり私はしばらく寒さで眠れなかった。

朝起きてその話をしているときにテントの入り口が網戸になっていることに気づく。
寒いはずだ。

最後に閉めたのはまぢこだ。その時の出来事も七不思議で済ませていた。

小屋で買ったワインを呑みながら、夕食は米を炊いて各自好きな具をかけ済ませた。まぢこが残ったご飯をおにぎりにしてくれたのでありがたく頂いたのだ。見た目も可愛くとてもおいしそうな出来だったのだが、かなりパンチの利いた塩加減だった。

疲れもあったのだろうが3人ともすぐに酔ってしまい19時過ぎには意識不明になってしまった。



5/5 5:00 起床

 本日は上高地までの下山のみ。特に早起きをするつもりもなかったのだがさすがに昨晩早く寝すぎたせいで目が覚めてしまう。


朝食をすませ。撤収準備に取り掛かる。

7:30 涸沢BC 出発

本日のミッションは
 ①徳澤でコーラソフトを食べる。
 ②明神でイワナの塩焼きを食べる。

少々渋滞気味の登山道を本谷に向け歩く。

Sガレを過ぎ本谷のつり橋の少し手前で人だかりが。何かあったようだ。
崖下10mほどのところに2名の方がいた。

1名が滑落して、もう一人が救助に行ったようだ。

詳細は控えるが少しだけお手伝いをしてから先に進んだ。

本谷のつり橋でアイゼンを外し横尾に向かう。

徳澤でミッション①をクリアして明神に向かう。


明神でミッション②をクリアして上高地に向かう。


もうこうなると観光客と変わらない。

この先上高地まで最後のピッチを惰性で歩き上高地到着。

タクシーにて沢渡まで移動。風呂に入って、高山の王将で飯を食って帰宅した。

総評
予想通り雪は少なく、予想以上に各ルート上の雪が悪かった。
全装でのアルパインは厳しくもあるが、それだけでも充実感は大きかった。
結果的に計画通りの遂行はできなかったが各自それなりに得るものはあったと思う。

タカは今年度の目標の1つ。南稜がやれてよかったと思う。
次回は自分で行ってくれ。

まぢこは西尾根に続き穂高でのアルパイン。
西尾根に比べると岩場も危険個所も多い。西尾根ではロープは使わなかったが今回は積極的にロープを使ったことで勉強になることも多かったと思う。この経験をしっかり自分の技術に加えてもらえると嬉しく思う。

ともあれ、各日とも長い行程を事故無く無事に帰ってこれたことは何よりだ。

これで今年の私の雪山は終了だ。そろそろ体重を絞ってクライミングがんばるかなw



















 



























2024年2月26日月曜日

錫杖岳 前衛壁 3ルンぜ


 期日 2024/02/24(土)

山域 北アルプス 錫杖岳 前衛壁 3ルンぜ

メンバー Kazu , くま , サトちゃん , タカ 計4名

 前週末に行った地獄尾根の疲れがなかなか抜けず、今週末は勝手に完全レスト日として嫁との攻防を制しソファーから一歩たりとも動かないで過ごせるかどうかという無謀なチャレンジをしてみようと思っていた。

 しかし、気がつけば世間は3連休。天気予報を見ると土曜日はよさそうだ。

私のソファーから一歩も動かないは日曜日にチャレンジすることとし土曜日はどこかに日帰りで山行に行くことにした。

 それでも3連休を控えた週末に急に山行を計画したところで皆すでに予定は埋まっているかも?実は密かに錫杖に行きたいと考えていたのでのパートナーは必要だ。

とりあえず、暇そうな連中に連絡してみることに、そして集まったのが今回のメンバーだ。

タカは暇人なので秒で参加表明。

クマはいろいろ不安でギリギリまで迷った挙句参加。

サトちゃんはメンバーみて仕方がないので保護者で参加してくれた。

昨シーズンはタイミングが合わなく2年ぶりの冬の錫杖だ。

前回はいろいろあって敗退しているので今回はできればトップアウトしたいと密かに思っていた。

2024/02/24

深夜1時にクマ・タカに迎えに来てもらい出発。

4時過ぎに中尾高原の駐車場でサトちゃんと合流。

4時30分 出発。

雪が少ない。

リヤ谷の登山道も雪は少なく、トレースもあり順調に進む。

始めの渡渉点の水量はかなり多く感じたが、誰もドボンすることなく無事に渡れた。

渡渉点を通過し短い急登をこなすとなだらかな斜面になりそのまま少し進むと本日登攀する錫杖の前衛壁が見えてくる。

中央に見える顕著なコルが3ルンゼ

この時点では天候は晴天。白と青のコントラストの中央に浮かぶ錫杖からは荘厳さを感じずにはいられなかった。

夏場は錫杖沢の出会いから沢沿いに進むのだが、冬場は雪崩のこともあり岩舎まで行き樹林帯を抜け3ルンゼに取り付く。

雪が少なく岩舎手前でも渡渉するはめになった。


岩舎手前の渡渉

ここで、クマがドボンする。
一瞬だったので何とか靴の中を濡らさずにすんだ。

渡渉すれば岩舎は目の前だった。

岩舎には見覚えのあるテントが1つ。知り合いだった。
前日に3ルンゼに行ったそうだが状況が悪くていろいろあったようだ。

岩舎前で

彼らに前日の情報もらいながら場所も少し借りて登攀準備をする。

この気温と彼らからもらった情報で3ルンゼのコンディションが最悪なことは容易に想像できた。

3ルンゼは各パートともに初めにチョックストーンの岩場を越えあとは雪壁を登るというスタイルになる。

氷がしっかりとついてさえいればそこまで難しいルートではないのだが氷が少ないとなかなか手ごわいルートになる。

サトちゃんは「だから氷ないって言ったでしょ」取り付きみて記念写真撮って帰りましょう。と言い。クマ・タカもその言葉に乗っかる。

私もその場の空気に合わせ「まあ、行くだけ行ってダメなら帰ろう」とは言ってみたが実は2年前の敗退の事もあって今回は前回と同様の条件下でトライしトップアウトしたかったのが本音であった。

仮に敗退になったとしてもチャレンジだけはしたかった。

そんな私の気持ちを汲んでか、とりあえずは行ってみることになった。

岩舎からはの登りはきつい

今回は4人なので2パティーに分けトライ。編成は私とクマ。サトちゃんとタカだ。
氷は少ないどころか全くない。雪もグズグズで悪そうだ。

リードは少しばかり厳しい戦いになりそうなので今回はザックをパーティーで1つにし、フォローが背負うことにした。

おかげで私は取り付きまでもずいぶん楽をさせてもらえた。

取り付き手前の最後のセーフティーゾーンで腹ごしらえ

8:30 3ルンゼ 登攀スタート

少ないとはいえF1はしっかり埋まって見えた。

とりあえずはロープは出さずF1を進む。この時点ではまだ雪もしまっていた。

下から見ると雪はしっかりあるように見えたのだがところどころ大きく口を開けていた。

F2の少し手前から露岩部が多くなりロープを出すことに。

私が少々ルンゼ内を突っ込みすぎたためF2の抜け口でいきなり緊張を要する登攀になってしまった。

サトちゃんはそんな私を見てか上手く回り込み弱点を突いた良いルート取りをしていた。

F2の抜け口で思わず声が出る。その声とともに私のスイッチが入ったようだ。

そのまま少し雪壁を上がり終了点に。クマをフォローする。

F3 ここが今回の核心だったと思う。

氷の全くない壁を登る。残置ハーケンはあるが信頼度は低い。
カムを使えそうな場所もない。

くまはそれを見て「ここ行くんすか?」「ルート違ってませんか?」を壊れた昔のレコード盤のように繰り返す。

それでも、ここしか登れそうな場所は無いのでとりあえず取り付いてみることにした。

岩は一枚のように感じるが、上下二段になっていて下部の岩から上部の岩に移る場所が厳しかった。

乗越部分には氷もなく雪もうっすらあるだけでバイルを打ち込もうと振っても岩に弾かれ鈍い音を出すだけだ。その音を聞くたびに絶望感を感じた。

F3 出だし核心

なんとかバイルのかかる場所を見つけアイゼンは額のシワほどの溝に置き手足にかかる力をできる限りすべてに全てに分散しどれか一つでも外れないことを祈るような気持ちで身体を上に引き上げた。

なんとか岩部分を越え少し雪壁を進むと終了点がある。

なんとも心もとない終了点だが少し補強してフォローを迎えるためコールした。

クマから「登ります」のコールはあったもののロープは緩んでこない。

ガリガリとアイゼンで岩をかく音は聞こえるのだが、、、。

しばらく、頑張っていたようだが「登れません」と声が聞こえた。

いつもの私ならここで辞めていたかもしれないが渋いクライミングをこなしたばかりでアドレナリンが大量に出ていたのだろうか?今現状で辞めるという選択肢は許さなかった。

初めての錫杖。条件は最悪と言ってもいい。しかも本格的な冬季登攀は初めてのクマ。

私からのアドバイスは「いいから登ってこい」「気合で登れ」「A0でもなんでもしろ」だ。

もう、アドバイスというよりも罵声に近い。

こんなアドバイスだけで登らされるクマは今思えばかわいそうだ。今思えば。

雪壁の端から見えたクマの顔は少し老けてみえた。

終了点でセルフを取りクマの口から出た最初の言葉は「頭おかしくないっすか?」だった。

後続のサトちゃん達も気になる。この日、我々の後は誰もいないので少し待ちながら休憩することにした。

暫くすると予想はしていたが「無理~~」っというコールがした。

クマのロープを外し別パーティーのサトちゃんをフォローで上げた。

フォローで登ってくるサトちゃんを見ていたが技術的には問題ないように見えた。

ただ、ただメンタルの問題なのだろう。

F2をリードしていたサトちゃんとF3で心折れたサトちゃんは別人のようだったがこっちが通常のサトちゃんだということを私はよく知っている。

タカの事はサトちゃんに任せて私とクマは先に進むことにする。

いつも、ニコニコして笑顔を絶やさないクマなのだが、この辺りからクマは笑顔を見せなくなった。

F3の終了点からそのままF4に繋いでもよいとは思うがF4の基部に支点が見えたためそこまで移動してから取り付くことにした。

そこまではクマがリードした。

7~8mの移動で簡単そうな場所だが、この辺りから雪が腐ってきて意外と悪く感じた。

F4はチムニー内をくぐって抜けたあとは毎度の雪壁を少し登れば終了だ。

ここも氷があればなんてことなく登れるのだろうが氷は無い。

今までの登攀で抜け口の状況も気になる。それでも行ってみないと分からないので取り付いた。

F4チムニー内


出口は悪かったが、穴から上半身を出しそこからいっぱいで手を伸ばした場所にはバイルはよくきいてくれた。

F3に比べればずいぶん楽な登攀に感じた私はサトちゃんたちのことは置いていくことにした。

F5の取り付きに移動しようとしたとき、サトちゃんから「帰る~」「降りる~」の敗退コールがあった。

私は当然止める気はないのでクマの悲しそうな顔は見ないふりをしてF5の取り付きに進んだ。

F3以降、クマは身体のあちこちが「ツル」アピールも忘れずに私にしていたが聞こえないふりをしていたことは秘密だ。

後で聞いたのだが「ツリ」止めの漢方薬を私の知らないところで3度も飲んでいたそうだ。

通常このF5もルンゼ左側の氷を登るのだが氷があるのは抜け口から2mほど残っているだけだった。

ルンゼ右の悪い岩から上部にあるチョックストーンに乗りルンゼ左に残った氷に取り付くようにルートを選んだ。

この残った氷は厚みもあり今回初めてスクリューを使った。

ただ、落ちればそこにある氷ごと全部落ちそうな気はしたが、それでも有るか無いかで気持ち的にはずいぶん楽になる。

すでに満身創痍で力尽きそうなクマに「ここが最後のクライミングだ。」と激を飛ばした。

最後の力を振り絞って上がってきたクマは次にF6があることを知って絶望していた。

F6は人工登攀になるので私はクライミングは最後というつもりで言ったのだが、、、。

すまん。

F6の人工部分をこなし雪壁に取り付く。人工部分より雪壁に乗り移る場所の雪がクズクズで悪い。足を置くと崩れていく。

崩れる足元に注意しながら30m先に見えるコルを目指す。

いよいよ最後だ。

コルに到着し灌木で支点を作りクマを迎える。

最後の雪壁を登るクマの顔は泣いている様にも笑っている様にもみえた。

これが本当に最後の雪壁だ

無事にすべてのピッチを終了し二人でコルに到着したのは13:55だった。

F6終了点にたどり着いたクマ。いい顔してるよw

クマが撮ってくれたんで私も

予報に反しガス覆われ視界が悪い。コルから下をのぞき込むと地獄への入口に見えた。

サトちゃんたちが下で私たちの帰りを待っているのであまりゆっくりはしていられない。

クマとお互いの健闘を称えあい少しだけ休憩して下山の準備を始めた。

下山は懸垂で一気に下降する。


数回の懸垂をするとF1の基部にサトちゃんとタカの姿が見えた。

私はてっきり岩舎で待っていてくれると思っていたのだが最後の懸垂ロープを私たちのために残してその場で待っていてくれていたようだ。2時間も。

無事にサトちゃんたちと合流し岩舎へ戻り大休止をとり下山の準備をした。

サトちゃんは年末におしりの手術をして以来まともな登山をしていない。

2週間前にアイスクライミングに行って30分ほど歩いただけで今シーズンアイゼンを履いたのが2回めなのに前回より前に進んだので良しとすると言っていた。

なんて潔い男なんだ!。そんな状態でも私に付き合ってくれるサトちゃんが私は大好きだ。

タカは初めての冬の錫杖に来られことで満足しているようだ。

次は自身の力でチャレンジしてほしいものだ。

そしてクマは、、、。

とても辛く苦しい登攀だったがよい経験ができた。などとそれっぽい言葉を言ってはいたが本音はどうも違っていたようだ。

サトちゃんとタカにどれだけ酷い仕打ちにあったかを私がいることを気にもせず熱く語っていた。その内容に関してはちょっとここには書きたくないw。

そのままにしておくといつまでもクマが私の悪口を言い続けそうなので下山することにした。

岩舎から2時間ほどで駐車場に戻った。今日はヘッデン下山は免れた。

サトちゃんとはここで別れ、帰路に就いた。

高山でクマおすすめの風呂屋によって王将で飯を食った。2人から飲んでも良いとの許可を得たので私だけビールを飲ませてもらった。

私は久しぶりに充実し、満足感を得られた山行になった。
F3を越えてからはもうどこを登っても落ちなる気がしなかった。

Dが4年に1度くらいあるという「今日は岩が小さく見える」というゾーンに私も今回初めて入った気がしたw。

たいそうな書き方をしたが所詮は錫杖の中では初級に位置付けされているルートだ。
それでも今回のような悪条件下でトップアウトできたことはうれしく思う。

今回連れて行ったタカとクマが来年は2人でトライしてくれることを願いつつ、今回の記録はこの辺りで〆るとしょう。

おつかれさん

追伸

 書くまでもない事だとは思うが翌日の日曜日に私がソファーに座っていたのはほんの一瞬だった。










































































残雪期 奥穂高南稜〜北穂高縦走

 期日 2024/5/3~5/5 山域 北アルプス 奥穂高岳(南稜)~北穂高岳 メンバー かず・たか・まぢこ 計3名 ~PROLOGUE~ 4月の中旬に肉山とまぢこの3人で西穂高西尾根に行くことに。 まぢこ、残雪期 穂高アルパインデビューだ。 西穂高西尾根はアルパインと呼ぶには少...