2026年9月25日金曜日

あゝ、遥かなる屏風。

 


期日 2026/9/21~23

山域 北アルプス 穂高連邦 屏風岩 雲稜

メンバー かず・タカ・まぢこ・篠原(犬)

序章

何年も前から、ずっと心のどこかにあった屏風。

何度も計画したが、そのたびに天気に阻まれてきた。

それでも、いつかは。

そう思い続けてきた。

そして今回、ようやくその時が来た。


 横尾から涸沢方面へ向かうと、その行く手に圧倒的な存在感で鎮座する岩壁。

それが、屏風岩だ。

アルパインクライミングをする者なら、一度はあの壁に取り付いてみたいと思うのではないだろうか。

もちろん私も、その一人。

横尾から涸沢へ向かうたびに、その姿を見上げ、

「いつかはやらなければ」

そう思い続けてきたのだが、こちらは順調におじさん化が進んでいるw

いつまでも「そのうち」なんて言っていられる歳でもない。

憧れというより、もはや自分の中でずっとやり残している一本のような存在になっていた。

もちろん何度も計画した。

しかし、その度に悪天候に見舞われては流れ、ズルズルと時間だけが過ぎていった。

それでも今回、ようやく屏風岩へ行くことができた。

長かった。

本当に、長かったw

今回の計画は9月19日〜23日。

思い切って長めに入山し、横尾をBCにして、その中で条件の良い日を狙って登ろうと考えていた。

ところが、台風の影響に加えて前線まで居座り、天気予報はなかなか定まらない。

私は、これまでずっと狙ってきた一本に挑むような山行が、天候などの理由で流れた時、

山の神様が「お前にはまだ早い」と言っているんだ。

そう思うことにしている。

ならば次のチャンスまでに、もう少し準備をしておこう。

足りないものがあるなら、それを埋めてまた来ればいい。

そんなふうに、次へ向けた準備期間をもらったのだと思うようにしている。

今まで屏風の計画が流れるたびにも、そう思ってきた。

ただ……

今回もダメだとしたら、いったいこれ以上、私に何が足りないというのだ?

愛か?

愛なのか?w

結局、ギリギリまで日程を決めきれないまま、最後は22日の快晴予報を信じて一本勝負。

21日入山。

22日アタック。

23日下山。

これで行くことにした。

9月21日 入山

3時30分集合。

そのまま上高地へ向けて出発する。

本当なら、もう少し早い時間のタクシーで上高地に入りたかったのだが、シルバーウィーク真っ只中。

当然のように予約はいっぱい。

前日の夕方、キャンセルが出ていないかもう一度確認してみると、8時なら取れるとのこと。

この日は横尾まで行くだけなので、上高地入りが昼前になっても偵察する時間は十分ある。

それならいいかと予約しておいた。

ところが当日、タクシーは予定よりかなり早く到着。

7時30分前には出発することができた。

これはありがたい。

上高地に着くと、当然のように知り合いに会うw

そこから横尾までは、まぁ散歩みたいなもの。

徳沢では犬がコーラソフト、タカがソフトクリームを食べている。

朝からそれ?と聞くと、

「朝ごはんです」とのこと。

まぁ、本人たちがそう言うなら、きっと朝ごはんなのだろう。

そんな感じでのんびり歩き、昼前には横尾に到着。


テントを張り終えると、雨が降り出した。


雨雲レーダーを見ると、1時間くらいで止みそうだ。

いつもの私なら、このタイミングで雨が降れば、待ってましたと言わんばかりにビールを開け、うっかり偵察には行かない。

だいたいそんなパターンだw

しかし今回は違った。

それだけ今回の山行には、私なりに気合が入っていたらしいw

幸い雨は30分ほどで止んだ。

本当なら登攀具も持っていき、取り付き近くにデポしておきたかった。

ただ、このあと夕方にも雨が降る予報。

もし増水して、翌朝渡渉できなくなれば、デポした荷物すら回収できなくなる。

それはさすがに困る。


ということで、登攀具は置いて、傘だけ持って偵察へ向かうことにした。


今回の偵察で一番確認しておきたいのは渡渉地点。

事前に聞いていた場所へ行ってみるが、水量が多く、そのまま渡るのは厳しそうだ。

少し下流へ移動し、何とか渡れそうな場所を探す。


ここでタカ、なぜかズボンを脱いでパンイチで渡渉w

当然、女子2名からしっかり叱られていた。

……ように見えたが、女子2名も、そして本人も、なんだか少し喜んでいたように見えなくもなかったw

世間と山の水は想像以上に冷たい。

最初は足が痛いくらいだったのだが、真ん中あたりまで来ると、その痛さが足から体を突き抜けて、頭のてっぺんまで伝わってくる。

もう冷たいというより、痛いw

全員無事に渡り終え、そこからルンゼを30〜40分ほど詰める。

そしてT4尾根の取り付きへ。


渡渉地点と取り付き。

この2つを明るいうちに確認できたのは大きい。

明日は真っ暗な中からここまで来ることになる。

帰りも同じルートを戻る。

ルンゼを下り、再び渡渉。

私はまぢこのすぐ後ろ。

まぢこは慎重に渡っている。

分かる。

分かるのだが……

こちらは足の感覚がなくなるほど冷たくて、じっと待っているのが本当に辛いw

心の中では、

早くしてくれ。

頼むから早くしてくれ。

と何度も思ったが、さすがに渡渉中に急かすわけにもいかない。

無事に渡り終えたあと、そのことを話すと、

「私は軽いから、水圧に耐えるのが大変なんです」

と、少しキレ気味に言われたw

「なんかごめん」w

それでも明日は絶対、まぢこより先に渡ろう。

そう心に決める。

横尾へ戻り、とりあえずビールを買う。

テントに戻ると、なぜか誰もいない。

しかし、皆がそろうのを待てるほど私はできた人間ではないので、勝手に先にビールを飲んだw

外にいても快適な気温。

ビールを飲みながら、明日の登攀具を整理し、パッキングを済ませていく。

夕食担当は今回もまぢこ。

快く?引き受けてくれた。

この日の夕食は親子丼。

山ではあまり量を食べない私だが、珍しくおかわりまでしてしまった。

夕食も終え、ほどよい酔いと満腹感に満たされて、早々に就寝。

さぁ、明日は屏風だ。

長年追い続けてきた一本に、ようやく手が届くかもしれない。


9月22日 屏風岩・雲稜ルート

 3時起床。

いつものようにコーヒーを飲み、それぞれ朝食を済ませる。

4時、テントを出発。

昨日確認しておいた渡渉地点へ向かう。


 当然、今日はまぢこより先に渡るw

暗闇の中ではあるが、昨日歩いているので迷うこともない。

改めて、偵察の大切さを知るw

渡渉を終え、ルンゼへ入る前に登攀具を装着する。

この先は落石もあるので、取り付きでゴソゴソするより、ここで準備してしまった方がいい。

ルンゼを詰めていくと、次第に周囲が明るくなってきた。

予定通りだ。

そしてT4尾根取り付きへ。


 昨日の偵察効果もあって、ここまでは順調。

今回の登攀のパーティー編成は、

私と犬。

タカとまぢこ。

の2パーティー。

雲稜ルートは私たちが先行する予定なので、T4尾根はタカ・まぢこパーティーに先に行ってもらう。

T4尾根

1ピッチ目。

まぢこがリード。

通常なら、少しフリーで登って大きな岩の上にある支点まで行き、そこでセルフを取ってから1ピッチ目を始めるらしい。

下から見ると、取り付き自体はそれほど難しくなさそう。

ただ、大岩の上に乗ってから支点まで数メートル横へ移動するところが嫌らしい。

砂と小石が乗っていて、途中に支点もない。

もしここで滑れば、そのままルンゼへ落ちる。

普段は少しくらいぶっ飛んだところのあるまぢこだが、さすがにここは怖そうだ。

私が少し目を離した、その時。

ガラガラッ!

と大量の砂と小石が落ちる音。

タカが、

「あっ!」

と声を上げる。

私が見上げると、まぢこが1mほど滑り落ちていた。

ギリギリで止まった。

危ない。

何とか本来のスタート地点までたどり着いたが、そこにあるハーケンもかなり怪しい。

あそこまで行くこと自体が危険だし、支点も信用しづらい。

結局、その支点は無視。

下からビレイしたまま、そのまま1ピッチ目の終了点まで登ってもらうことにした。

ここで、これ以上時間とリスクをかけるのは得策ではない。

まぢこにロープをフィックスしてもらい、私はこのあと使うロープを背負って固定ロープを登る。

終了点まで上がってセルフを取り、今度はそのまままぢこのビレイをする。

その間にタカも固定ロープで上がってくる

2ピッチ目は私がまぢこをビレイし、タカは固定ロープで上がる。

最後に犬。

そんな形で時間を詰めながら進んでいく。

2ピッチ目は少し難しいと聞いていたが、1ピッチ目の出だしがあまりに悪かったせいか、むしろ快適に感じるw

2ピッチ目 終了点から


3ピッチ目。

出だしはスラブ状。

コンテでも行けそうな場所だが、土と落ち葉がかなり積もっていて、足元がよく分からない。

1ピッチ目のこともあるので、ここはロープを出す。

まぢこは、手で土や落ち葉を払いながら、足を置ける場所を一つずつ確認して登っていく。

丁寧で良いクライミングだ。

ただし、その土と落ち葉はすべて下でビレイしている私に降ってくる。

だが、あえてそこは甘んじて受け入れようw

その先は少し歩きになり、再びロープを出してT4テラスへ。

T4 テラス 直前

予定より1時間ほど遅れて到着。

そして、T4テラス。

ここから先が、今回の目的。

いよいよ雲稜ルートだ。

少し休憩し、不要なものはテラスに置いていく。

各パーティー1つずつザックを持ち、登攀に必要なものだけを持って壁へ入る。

雲稜ルート

1ピッチ目 50m 5.7

私と犬のパーティーが先行。

長年やりたかった屏風。

その最初の一歩を前にすると、珍しく少し緊張している自分がいた。

一度深呼吸。

そして右足から壁へ入る。

これは昔からの私なりのゲン担ぎみたいなものだ。

最初はほぼ真っ直ぐ。

やがて明瞭な右コーナーへ入り、小さなハングを越えてピナクルテラスを目指す。

5.7。

正直、少しナメていた。

最初の小ハングが、思っていたより悪い。

ハーケンは比較的しっかりしていて数も多いので、怖さはない。

ただ、ホールドが悪い。

左手で取ったホールドも、見た感じより小さく、次のムーブが起こせない。

一度もどって、テンション。

落ち着いて周囲を見直し、もう一度やってみる。

今度はあっさり抜けた。

終わってみれば、ここがルート全体で一番難しかったんじゃないかと思うくらいだった。

その後は少し右へ。

ピナクルテラスへ向かう。

テラス直下にも小さなハングがあるが、こっちは大したことはなかったw

トポでは50mとなっているが、実際には40mくらいだろうか。

終了点から犬を上げる。

ロープが順調に上がってくる。

そして途中で、

……止まった。

あ、ハングだなw

少し苦労しているようだが、何とか抜ける。

その先のもう一つの小ハングでは 「1つじゃないんか!」

という声が聞こえてきたw

無事ピナクルテラスへ。


2ピッチ目 40m 5.9

ピナクルを越え、小垂壁を右上気味に越えてフェイスへ。

そこから左上するルンゼに出て、扇岩テラスを目指す。

……と、トポにはあるのだが、ピナクルのトップに立ったところで、いまいち進む方向が定まらない。

確か、この辺りから右へ大きくトラバースするはずだ。

右方向へ目をやると、正面の垂壁上部にリングボルトが1本。

しかし、その先の支点は見えない。

少し下って右へ行くのか?

そう思って下を見ると、そこにもリングボルトが1本。

これで、さらに迷うw

ただ、下へ降りたところで、その先に続きそうなラインは見当たらない。

ならば上だろう。

とりあえず上部のリングボルトにクリップし、少し大きめに体を右へ振って、右上のガバに手を伸ばす。

両手をマッチすると、下からは見えなかった位置にハーケンが連打されていた。

あぁ、ここだ。

ようやくラインがつながった。

ここがトラバースのポイントだった。

事前にかなり予習していたので、ここは相当怖いのではないかと思っていた。

実際、足元は大きく切れ落ち、高度感はかなりある。

ただ、両手ともガバ。

足もスメアで十分効く。

そのうえハーケンもたくさんあるw

場所さえ分かってしまえば、思っていたほど恐怖感はない。

そこから先は扇岩テラスまでラインも分かりやすく、快適に登ることができた。

1ピッチ目の5.7が思った以上に悪かったので、5.9と書かれているこのピッチはかなり身構えていた。

しかし実際にはこちらの方が素直。

グレードとは裏腹に、むしろ2ピッチ目の方がやさしく感じた。

終了点もしっかりしたものがあった。

続いて犬をフォローで上げる。

この2ピッチ目、終了点からは犬の登り出しがまったく見えない。

おそらく犬の位置からも、私がどこを登っていったのかは見えていなかったと思う。

ロープを追えば進む方向は何となく分かるとはいえ、肝心のトラバースへ入る場所が分かりづらい。

やはり少し迷っているようだ。

今回はこんなこともあろうかと、無線を持ってきていた。

正解だった。

無線でラインを伝えながら誘導し、無事にトラバースを通過。

扇テラスから見た2ピッチ目

その後は順調に上がってきた。

そして辿り着いた扇岩テラス。

聞いていた通り、ここはビバークもできるほどの広さがある。

屏風の壁の途中、こんな場所で夜を迎え、月明かりに浮かぶ岩壁と、その向こうに広がる満天の星。

谷の向こうに浮かぶ稜線を眺めながら、静かな夜に酒を飲む。

綺麗なお姉さんに囲まれながら飲む酒も、もちろん美味い。

でも、こんな場所で飲む酒は、それとはまた別物なんだろう。

ひょっとしたら、人生で一番美味い酒になるのかもしれない。

……なんてことを、つい想像してしまうw

人工部分

3ピッチ目 A1 40m

このルート上で唯一の人工登攀ピッチ。

見上げると、ほぼ完全な垂壁。

フリーで登れば5.11c〜dあたりとも言われ、トポによっては5.12の表記もある。

ゲレンデでトライするならともかく、こんな場所でフリーにこだわる連中は、きっとどこかイカれているに違いないw

もっとも、私には関係のない世界だw

ということで、迷うことなくアブミを取り出し、先へ進む。

ボルト間隔は近く、人工としてはかなり登りやすい。

ただ、中には体重を預けるには少しばかり不安なものもいくつかあるw

こんなこともあろうかと、細引で作ったリングもいくつか用意してきたので、それも交えながら進んでいく。

すると途中で、リングボルトの終了点らしきものが突然現れた。

捨て縄とビナも比較的新しく見える。

これか?

ただ、ロープはまだ半分も出ていない。

トポの距離とも合わないし、ここから先どこまで人工が続くのかも、いまいちよく分からない。

残っている弾の数にも少し不安が出てきたので、いったんここでピッチを切ることにした。

人工はどうしても時間がかかる。

その間にタカ・まぢこパーティーも追いついてきて、下のテラスが急に賑やかになった。

犬が人工を登り始める。

すると突然、下から大爆笑が聞こえてきた。

なにやら楽しそうだ?

いや、そうじゃない。もう少し緊張感を持てよw

あとで聞くと、犬がハーネスからアブミを取ろうとして、なぜか水の入ったナルゲンボトルを掴んでリングボルトにクリップしようとして。

「違う〜〜!」

となったらしい。

犬は人工登攀の経験がそれほど多くないので、もう少し苦労するかと思っていた。

最初こそ少し手間取っていたようだが、何回か掛け替えているうちに練習した動きを思い出したのか、どんどんスムーズになっていく。

そのうえ、しっかり爆笑まで取ったのだから、ある意味完璧だw

犬が上がってきたところで、もう一度トポを確認。

どうやら4ピッチ目は、まだ少し人工を続けたあとフリーへ移るようだ。

少し上を見ると、しっかりした終了点も見える。

おそらく、あれが本来の3ピッチ目終了点なのだろう。

トポの40mという距離は少し長い気もする。

実際には30mほどではないだろうか。

ここでまた少しだけ上がってピッチを切り直すのも効率が悪い。

なので、ここを3ピッチ目の終了点として、そのまま次へつなげることにする。

3ピッチ目を終えた時点で、予定よりかなり時間を使っている。

このままのペースでは、タイムリミットまでに抜けるのは厳しそうだ。

少し嫌な感じが頭をよぎる。


4ピッチ目 40m Ⅳ・A1(5.9)

 ハング下を右へ出てルンゼを渡り、垂壁からテラスへ抜けるピッチ。

3ピッチ目を少し手前で切っているので、出だしはまだ人工。

このまま人工で行ってもいいが、時間も押している。

A0を少し交えればフリーでも行けそうなので、そのまま力技で登っていく。

本来の3ピッチ目終了点らしき支点を通過。

そのまま4ピッチ目へつなげる。

ハング下まで上がり、そこから右へトラバース。

2ピッチ目と違って、進む方向は分かりやすい。

トラバースの入り口ではカムが1本決まる。

問題はそこから。

5〜6mほど、ほぼ支点が取れない。

古いハーケンらしきものはあるが、とても使える状態ではない。

しかもホールドはどれも信用できない。

手をかければ欠け、体重を預けようとすれば剥がれそうになる。

次に出す手も、次に乗せる足も、ひとつひとつ確かめながらでないと不用意にムーブを起こせない。

足元は草付きで土も出ていて、なんとも気持ちが悪い。

たった数メートル。

されど、この数メートルがかなりシビレた。

何とかトラバースを抜ける。

本来なら、ここからルンゼを渡って垂壁を登り、その先の終了点まで抜けるピッチ。

実際、その終了点も進む先に見えている。

ただ、このまま進むとロープがかなり屈曲しそうに見えた。

しかもトラバースを越えてからは支点も取れていない。

この状態で、フォローの犬が万が一落ちれば、大きく振られることになる。

そこで、ルンゼを渡る手前にあった支点で、いったんピッチを切ることにした。

セルフを取り、続いて犬をフォローで上げる。

犬は、残っていた3ピッチ目の人工部分をアブミを使わずに上がってくる。

少しハングした場所もあり、

「厳しかったらアブミ出してね」

と伝えるが、

「行きます」

と、そのまま突破。

犬と登るようになって、まだ1年と少し。

こういうところを見ると、ずいぶん強くなったなと思う。

ただ、ここからがこのピッチの嫌なところ。

問題のトラバースだ。

入る前に犬へ、

落ちればかなり振られること。

岩が脆く、ホールドも安定していないこと。

急ぐ必要はないので、とにかく慎重に。

そう伝えて、こちらから見守る。

改めて見ると、なかなか嫌らしい場所だ。

足元は細い草付きと土。

そのすぐ下はスパッと切れ落ち、谷底まで一気に高度感が広がっている。

岩の部分も決してきれいなフェイスではなく、草や土の間に出ているホールドを拾いながら横へ移動していく感じ。

しかも、この先に安心して体重を預けられる支点はない。

犬も、それは十分分かっている。

ひとつホールドを触っては確かめ、足を置いては荷重をかけられるか確認する。

普段より明らかに動きが慎重だ。

恐怖心と闘っているのも、見ていれば分かる。

距離にすればほんの5〜6mだが、妙に長く感じる。

こちらも余計なことは言わず、ただ見守る。

そして最後の数歩を慎重にこなし、無事にトラバースを抜けた。

終了点まで来た犬の姿を見て、こちらもようやく緊張が解けた。

見ているだけでも、なかなかシビレるトラバースだった。


5ピッチ目 40m 5.7

 スラブのクラックから小ハングを左へ抜け、そのままスラブへ。

4ピッチ目を少し残しているが、そのままつなげて5ピッチ目に入る。

ここからは斜度も少し落ち着いてくるので、スラブではあるが割と快適。

ハーケンも多く見つかるが、どれも古い。

さすがに全部を信用する気にはなれないので、ところどころカムで補強しながら進む。

特に苦労することもなく、そのまま終了点へ。

犬もこのピッチは問題なく上がってきたようだ。

5ピッチ目に入る頃には、斜度も少し落ち着き、登攀もかなりスムーズになってきた。

ここからは思ったほど時間もかからない。

少しずつ遅れを取り戻していく。

5ピッチ目 終了点から

そして最終ピッチを前に時計を見る。

これなら、なんとか間に合う。

さて。

次はいよいよ最終ピッチ。


6ピッチ目 30m Ⅳ

 ルンゼ状のスラブ。

このピッチも前のピッチ同様、スラブが続く。

少し湿っている感じはあるが、特に問題はない。

ここまで来ると、少し消化試合のような感覚もある。

ただ、高度感は素晴らしい。

振り返れば、ここまで登ってきた屏風の壁と、その下に広がる景色。

最後まで、気持ちのいいピッチだった。

そして無事、終了点へ。

6ピッチ目 終了点から


犬を迎え、2人で完登の喜びを分かち合う。

長かった。

いろんな意味で、本当に長かった。

ようやく、屏風を登ることができた。

6ピッチ目の終了点で、タカたち後続パーティーを待つことにした。


ここまでほとんど何も食べていなかったので、行動食に持ってきたアップルパイを犬と食べる。

うまい。

しばらく待ったが、ハンギングのままではだんだん辛くなってきた。

それに時間もかなり押している。

ここで全員が揃うまで待ってしまうと、この先の懸垂下降でも待ち時間が増え、その分だけさらに遅くなる。

3ピッチ目付近の懸垂用支点までは登攀ルートともかぶらない。

ならば先に降りておいた方がいい。

そう判断して、犬と先に下降を始めることにした。

懸垂の準備をして、とりあえずひとつ下の支点まで降りる。

次の支点に着いて横を見ると、ちょうどまぢこが5ピッチ目の終了点にいた。


こちらが先に下降することを伝える。

するとまぢこが、

「最終ピッチ、どうでした?」

と聞いてきた。

「まぁ、わりと消化試合みたいな感じだったよ」

と答える。

すると、

「もう時間なんで、私たちはここでやめます」

とのこと。

5ピッチ目終了点


自分たちだけ目標の終了点まで行ってしまったことに、少し申し訳なさも感じた。

ただ、今回は初めてのルート。

できれば懸垂下降の途中で暗くなるようなことは避けたい。

ここから最終ピッチへ進めば、その分だけ下降開始も遅くなる。

そう考えれば、ここで切り上げるのは良い判断だったと思う。

「気をつけて降りてきてね」

と伝え、私たちはそのまま下降を続ける。


4ピッチ目で大きく右へ回り込んでいるため、下降ラインは登ったルートとは少し違う。

真っ直ぐ降りていき、3ピッチ目の少し右側へ。

そこから左へ寄りながら懸垂し、3ピッチ目の終了点へ合流する。

3回目の懸垂では、かなり左へ振らなければならない。

2回目の懸垂を終えたあたりで下を見ると、どう見ても扇岩テラスまでロープが届きそうに見えた。

なら、このまま行けるな。

そう思って下降を続ける。

……届かないw

仕方なく少し登り返し、登攀時に3ピッチ目を途中で切った支点へ戻る。

そこで犬を待つ。

ただし、ここは本来の終了点よりかなり居心地が悪い。

犬が降りてきて一言。

「なんで、ここで切ったんですか?」
「いや……テラスまで届いてるように見えたんだって」
「でも、上にちゃんと支点あったじゃないですか」
「いや、それは分かってたんだけど……届くと思ったんだって」
「なんでですか?」
「だから、そう見えたんだってw」


その後、無事に扇岩テラスへ着いてからも、
「なんで、上じゃなかったんですか?」
「だから、ごめんってw」

しかもその懸垂中、ロープが少し引っかかった。

犬に、

「ちょっと引けない?」

と声をかける。

「どっちのロープですか?」

と聞かれ、

なぜか私の口から出た言葉は、

「だいだい!」

「……だいだい?」

……。

「何色ですか?」

「だから、だいだい!」

ロープは青と緑である。

犬も、

「だいだい?」

私も、

「……だいだい?」

体だけでなく、頭の方もだいぶ怪しくなってきていた。

疲れというのは恐ろしい。青と緑しかないのに、なぜか「だいだい」が出てくるw


扇岩テラスからは、あと2回ほどの懸垂でT4テラス。

ようやくT4へ戻る。

犬にコール。

下から犬の懸垂を見上げていると、なんだか少し上手くなったように見えた。

彼女の成長なのか。

それとも、私の疲労で見る目がおかしくなっていたのかw

T4テラスで水を飲み、荷物をまとめる。

私の水はほぼなくなっていたので、犬から少しもらう。

飲もうとすると、

「がぶ飲み禁止っす」っと

はい、、、w

その頃、まぢこ達も雲稜の最後の懸垂ポイントまで降りてきた。

こちらは先にT4尾根を下降することを伝える。

T4尾根は4回ほどの懸垂。

順調に降り、ようやく取り付きまで戻る。

終わった。

あとはタカとまぢこを待つ。

そのうち辺りは暗くなってくる。

ギリギリだったw

完全に真っ暗になった頃、2人も無事に下降してきた。

4人全員そろった。

とりあえず、無事に戻ってこられたことを喜ぶ。

ここから横尾まではヘッデン確定。

もう急ぐ必要もないので、少し休んでから戻ることにする。

ルンゼの下降は単純だし、昨日偵察もしている。

渡渉地点にも問題なく到着。

水量は昨日より少し減っているように見える。

無事に渡り終える。

そこから河原沿いを少し歩けば、一般登山道へ出る。

……はずだった。

私と犬、なぜか何も考えずそのまま河原を歩き続ける。

しばらくして犬が、

「行き過ぎてませんか?」

私「そんなことある?」

地図を見る。

……めちゃくちゃ行き過ぎているw

2人で爆笑。

戻ると、タカとまぢこから、

「何してるんですか?」

、、、、、。w

少し戻り、無事に一般登山道へ。

そこから横尾までは問題なく歩き、ようやくテントへ帰還。

疲れた。

そして、もう一つ分かっていたことがある。

日が暮れた時点で、横尾の売店には間に合わない。

つまり……

ビールが買えない。

今日一番の危機である。

しかしここで神降臨。

まぢこが、なんとビールを1本持っていた。

犬は酒を飲まない。

ということで、私、まぢこ、タカの3人で350mlのビールを分ける。

たった350ml。

でも、この一杯がたまらなくうまい。

うまい。

うますぎるw

片づけはもう翌日に回すことにして、夕食はまぢこと犬にお願いする。

彼女達も相当疲れているはずなのに、本当にありがたい。

犬はまだまだ元気そうだなw

この日のメニューは、チーズリゾット?なるもの。

完成を待つ間、こちらは座ったまま完全に電池切れ寸前。

おじさんの私としては、

飯が先か。

睡魔が先か。

かなりギリギリの戦いだったw

なんとか睡魔にも負けず持ちこたえ、無事に夕食をいただく。

本当なら、もう少し今日の登攀のことをあれこれ話していたかった。

でも、もう時間も遅い。

あまり騒げば周りにも迷惑なので、この日はそのまま寝ることにした。

まぁ、続きは明日でいい。

9月23日 下山

最終日。

今日はもう上高地まで戻るだけ。

目覚ましもかけず、惰眠をむさぼってから帰るつもりだった。

……のだが。

結局、5時過ぎには目が覚めるw

そう、おじさんは早起きなのだ。

私がテントの中でゴソゴソし始めたせいで、まぢこも犬も目を覚ます。

なんか、ごめんw

その横でタカだけは、何事もなかったようにずっと寝ている。

コーヒーを飲み、昨日の夕食の残りを温め直して朝食にする。

その後はのんびり片づけを済ませ、帰路についた。

横尾からは、昨日登ったルートがよく見える。

改めて見上げると、

まぁ……なんというか、

すごい場所を登っていたんだなと思う。

やれてよかった。

それと同時に、4人とも無事に帰ってこられたことにも、こっそり感謝した。

その後は特に面白いこともなく、そのまま上高地へ。

タクシーであかんだな駐車場まで戻り、平湯で風呂に入って帰宅。

こうして、長かった屏風の山行は無事に終わった。


総評

ずっと行きたいと思いながら、何度も天候に阻まれ、気が付けばずいぶん長い時間が経っていた。

だからこそ、今回こうして実際に登ることができたことは、素直にうれしい。

雲稜ルート自体は、グレードだけを見れば今の自分にとって特別難しいものではないと思っていた。

ただ、実際に登ってみると、岩の脆さ、古い支点、草付き、ランナウト、ルートファインディング。

ゲレンデの数字だけでは測れない、いかにもアルパインらしい難しさが随所にあった。

そして何より、トポに書かれた数字だけでは表せない、素晴らしいルートだった。

特に4ピッチ目のトラバースは、今思い返してもなかなかシビレる。

そして今回は、一緒に登ったメンバーの成長を感じられた山行でもあった。

犬と組むようになって1年と少し。

人工もこなし、悪いトラバースも自分で越え、以前より明らかに強くなったように感じた。

まぢこも、T4尾根の出だしではヒヤッとする場面こそあったが、その後は落ち着いて登り、状況を見ながらしっかり判断していた。

以前より頼もしくなったなぁ、と感じる場面が何度もあった。

まぁ、犬の懸垂が上手く見えたのが彼女の成長なのか、私の疲労で見る目がおかしくなっていたのかは、未だに分からないがw

タカも含め、4人とも無事に戻れた。

結局、山ではこれが一番大事な事だと思う。

長年、抱き続けてきた屏風への思い。

何度も見上げ、そのたびに「いつか」と思ってきた壁。

その「いつか」に、ようやく手が届いた。

横尾から見上げる屏風は、登る前と何も変わらず、相変わらず大きくそこに立っている。

でも、それを見上げる私の気持ちは、少しだけ変わった。

もう「あそこを登らなければ」と思うことはない。

これからは、あの壁を見るたびに、

「あそこを登ったんだ」

と、きっと思う。

長いあいだ憧れ続けた景色が、今は自分の記憶の中にある。

それでいい。

あゝ、遥かなる屏風よ。



2025年2月26日水曜日

錫杖岳 前衛峰 1ルンゼ


 期日 2025/2/22~24

山域 北アルプス 錫杖岳 前衛峰 1ルンゼ
メンバー かず・MA

昨年から狙っていた錫杖1ルンゼに行ってきました。
結果だけ見れば無事トップアウト。しかしながらパートナーMAの力は大きく、私の力不足を実感してしまう山行となった。

週が明け、アタック日が今週末に迫ってくると心がピリピリし始める。
仕事をしていても、飲んでいても、嫁に怒られているときでさえも気が付くと錫杖の事を考えている。
そして、TVを見ていても大寒波の事ばかりが目につき始める。これ以上私の事を不安にさせないでほしい。それでも、雪はこれ以上降ってほしくはないが冷え込むことは願ってもない事だ。

不安と期待が交差する少し情緒不安定な週を過ごしながら土曜日の朝をむかえた。

2025/2/22 AM6:00 
MAに家まで迎えに来てもらい出発。

9:30 駐車場着 出発。
この日はとりあえず幕営ポイントまでだが雪が多く厳しいラッセルになることも覚悟して入山したのだが新雪自体はそこまで多くもなく、ありがたいことにトレースもあり、せっかく準備してきたワカンと覚悟は無駄になった。

12:30 錫杖沢出会付近

渡渉ポイントは悪く、油断するとドボンしそうな雰囲気だ。
MAが先行する。「あ」あと少しのところでハマる。幸いなことに浸水は免れた。
私も続く。MAがハマった場所ではより一層の注意をしていたはずだが「あ」っとなる。
私も幸いなことに浸水は免れた。

渡渉点をこえて30分も歩くと前衛峰が見えてくる。
いつ見ても、雪と氷の鎧を纏った錫杖は美しくもあるが、その迫力と威圧感は圧巻だ。
そして今回挑戦する1ルンゼは峰を左右に分割するかのように一筋の美しい白線を氷で描き。我々を待っている様にも拒絶している様にもみえた。

この天に向かうかの様に垂直に伸びる白く美しい一筋のラインを一目見れば、このルートに憧れを感じないクライマーはいないのではないかと思うほどだ。

その美しさと迫力に呑まれないように気持ちを強く持ち、「俺たちなら絶対にやれる!」っとMAとお互いを鼓舞しあった。

13:00 岩小屋着。
すでに先行者が幕営していたのでもう少し先の適当な場所を切り出し幕営ポイントとした。
幕営の準備を済ませ、少し落ち着いてから偵察に向かった。
普段なら幕営の準備ができればすぐにでも呑みたい。いや。呑む私だが今回ばかりは呑むことより偵察に行きたいとさえ思ってしまった。

基部までトレースはあったがそこから1ルンゼに向かうトレースは無く距離にすれば短いが上部から落ちてくる雪もあり1ルンゼ取り付き直下では胸ほど沈む場所もあった。

取り付き手前

1ピッチ目

不安視していた1ピッチ目も実際に取り付いてみないと分からないことも多いがここからの見た目には氷と雪もついていてとりあえずはつながってはいる様に見えた。

1ルンゼの取り付き出だしの少しハングしていて困難になると予想していた部分は積雪が多く幸運なことに雪の下に隠れていた。

先行者もいたことで誰か取り付いているかと思っていたがこの日は誰も取り付いていないようだ、まだ誰も触れていない雪と氷が美しい線を描いている。できる事ならこのまま取り付きたい。
そう思っているとMAが「明日は絶対に1番で取り付きましょう」っと。やはり考えることは同じだ。

無事偵察も終え、明日への希望もつないだところで幕営地に戻った。
MAはお酒が飲めないので私だけMAの分まで頑張って呑むことにした。

MAとはもう何年も前から友人だがこうして2人きりでの幕営は初めてだった。
夕飯はMAが準備してくれた味噌鳥鍋を食べながら明日の登攀のことはもちろんだが、クライミングやアルパインについて、はては少し下世話な話など沢山の話をして盛り上がった。
とても楽しく素敵な時間だったが明日の朝は早いので20時には就寝とした。

2/23 アタック日
5時少し前に起床。いつものルーティーン通りコーヒーを沸かし飲む。
昨日の晩飯の残りに棒ラーメンを入れ食べ、準備を済ませて6時出発。
辺りはまだ暗くヘッデンの明かりと昨日つけたトレースを頼りに進んだ。

何故か取り付き基部で昨日つけたルートから外れラッセルしだすMA w

取り付きでガチャ等準備しザックも1つにまとめフォローが背負うことにした。
MAは煙草を吸わないが私は煙草を1本吸って右足から取り付くのがルーティーンなのでそれに付き合ってもらったw

私はアイスパートはあまり得意な方ではないので上部のバーチカルな部分はMAに依存したい。なので1ピッチ目のような泥臭い場所は私の方で処理するつもりだった。
そのことはもちろんMAと打ち合わせ済み。
さぁ、いよいよだ。
初めの一手、右手のバイルを振る。「こつん」っと岩にあたる。
「でしょうね」っと思いながら、それでもギリギリかかるので体を上げる。
左下の丸っこい岩の上部(写真1ピッチ目参照)に乗り込み右側の雪の詰まったルンゼに移ろうとバイルを振るとうっすら張った氷の上に雪が乗っているだけだったので全部なくなっる。「でしょうね」っとここでも思う。仕方がないのでほんの数メートルではあるが左右の壁を上手く使いドライでつなぐ。次の雪のついた細い溝部分に移る前にプロテクションが欲しいところ。0.3くらいのクラックもどきを見つけそこにリンクカムを効かせたいところだが上手く効まらない。何度か場所を調整しながら墜落に耐えられるかどうか不安はあったが一先ずは効いた事にして先に進む。
手も足も心さえも騙しながら攀る。そして下は見ないw。
とにかく絶対に落ちられない。この緊張感が初めは怖いのだがこの辺りから心地よくも感じ始めるから不思議だ。

傾斜が少し落ち着き1ピッチ目の終了点が近づくが夏の終了点はずっと左側にあるのでもちろん使えない。
スクリューで支点をつくりたいところだが氷が悪く使い物にならない。
ちょうど2ピッチ目の少し入ったところに岩が見えるのでとりあえずそこまでロープを伸ばすことに。MAからロープの残りがあと5mとコールが。

ロープギリギリでそこまでは行けたのだがその岩から支点は取られそうにない。ハーケンも打てそうにない。草付きが凍っていることを期待してイボイノシシを使うつもりで岩の横の雪をどかしてみると下から折れた木の根の部分が出てきた。「ラッキー」だ。
それを基本にイボイノシシを使い補強して支点とした。

MAのレアなフォロー写真w

2ピッチ目の残りはMAがリード。っというか3ピッチ目とそのままつなげて登攀。



この辺りから氷は安定しだした。そして、わかってはいたがどんどんバーチカルになってくる。

3ピッチ目

そして、4ピッチ目に。

氷の状態はおおむね良好だが、それでもどこでもよい訳ではないのでラインの選択が難しい。
それに何故かMAはより難しそうな場所、よりバーチカルな場所を好んで選ぶ。
なんならそこは少しかぶってないか? こんな場所まで来ても得意のおじさんいじめかw?

そもそもアルパインとはルートの弱点を見出し登攀するものなのでは?などと思っていても所詮はフォローなので登攀ラインの最終的な選択権は私には無いのだw

曇天の中だったがこのころから時折お日様が顔をみせてくれだす。

日の光に照らされると辺りは青く美しく輝きはじめ幻想的な世界に。それと同時に背中に感じる日の光の暖かさが心を癒してくれる。だがそれもつかの間、次の瞬間にはチリ雪崩が私を現実に引き戻してくれる。

無事4ピッチ目も終わり、おそらく5・6ピッチは繋げられるので次が最終ピッチになるだろう。

いよいよ次はこのルート核心部になる5ピッチ目の氷柱群に入る。

ここまでずっとハンギングビレイだったので、一度も休憩もしていない。ここもハンギングビレイではあるが核心部に備え一度一服することにした。
白湯がうまい。

5ピッチ目はラインが狭くビレイ点が氷のフォールラインから避けられない。
MAがバイルを振るたびに氷が降ってくる。なるべく直撃しないように体を左右に振りながらビレイする。時折耳元をビュンっという音とともに氷塊がかすめていく。

薄かぶり気味の氷柱群の氷は脆く悪い。スクリューの打数が増える。当然だ。気持ちもわかる。わかるのだが、、、。これをすべて回収しながらこの氷柱群を抜けるのは私にとっては骨が折れそうだ。

MAはチリ雪崩の攻撃さえも、ものともせずに魂のこもった熱い登攀を見せてくれる。
やはり強い!漢だ!私も泣き言など言っている場合ではない。

キッチリ抜けきりコールが。私の番だ。
フォローなのだが、場所が場所だけに(終了点の様子が分からないので)基本テンションはかけたくない。堕ちたくない。

連打されたスクリューを回収しながら攀じる。腕がきつくなってくる。
それでも何とかテンションをかけずに氷柱群の抜け口が見えてきた。
最後の乗越手前部分で身体を左に振りたく、右のバイルを右斜め上にかけ少しレイバック気味に引き左のバイルを振ろうとした瞬間。氷がはじけ飛んだ。「しまった」っと思った瞬間にはすでにロープにぶら下がっていた。止まった事には「ほっ」としたが次の瞬間にはここまで「ノーテンだったのに」っと私にしては珍しく思った。

もう、どうせぶら下がっているのだからっと割り切り少しレストさせてもらう。
上を見上げると左側の少し上にでかい雪庇が見え気持ち悪い。MAも同じことを言っていた。

最後は氷柱群を抜け左側の細い溝に身体を入れ雪庇の端をかすめながら体を上げる。
後は雪壁を少し登れれば終了点だ。

抜けた。やれやれだ。MAが笑顔で迎えてくれる。

本当は山頂まで行きたかったが、雪が多くラッセルになり雪崩も怖いので今回はここで終了することにした。


トップアウト出来たことの喜びを2人でかみしめ下山の準備に入る。
少し記憶があいまいだが確か5回の懸垂(残置終了点x2+アバラコフx3)で取り付きまで戻った。


  取り付きに戻ると他PTの方が偵察に来ていた。
1ピッチ目の出だしをみて「これ行ったんですか?」っと。するとMAが「僕のパートナーが行ってくれました!」っと私の肩に手を。もちろん私なんかよりはるかに強いMAだ。行けないわけがない。それでもその言葉は僕にとってはとても嬉しい一言だった。

いつまでも直下にいるのは危険なので早々に撤収。
疲労感はあったが心地よい。幕営地までは足取りも心も軽い。

幕営地まで無事帰還。
MAと握手しながら今回の成功を今思えば少しおかしなテンションで称えあったw。

直後にMAから「明日の左方カンテはやめておきましょうか?」っと
実は翌日は左方カンテなどという噂もあったが所詮は噂。
行くわけがない。行けるわけがない。私はw

MAは本当は少し行きたかったのかもしれないが左方カンテの取り付きを見る限り(一応は確認はしていた)1ルンゼのついでにやるレベルではない。っというのが私の意見だw
改めて一つの目標にし次回MAと行くことを約束し問題を先送りすることで今回は行かずに済んだwww

片付けも適当にテントに潜り込みビールを飲む。
緊張感から解放されて飲むビールは格別にうまい!

この日の晩飯はすき焼きだ!登攀の成功を祝うにはもってこいのメニューだw

MAが飲めないのは少しばかり残念だがお互いの登攀を褒め称えながら過ごした。
はたから見れば少しばかり気持ちの悪い光景だろうが今日だけは許してほしい。

終わったことの安堵感と疲労感で酔いのまわりも早く早々に眠くなる。
時間は覚えていないが明日は下山だけなので目覚ましもせずそのまま就寝した。

2/24 下山

目覚ましはしていないが6時少し前に起床。
コーヒーだけ飲んで朝食はパス。

バカ話をしながらボチボチ片付け撤収。
天気が良い。登攀の成功と青空が晴れやかな気分を誘う。


青空に浮かぶ前衛峰はとても美しいがこれが昨日だったらっと思うとぞっとする。
この日も数PTどこかを登っているようだが雪崩に巻き込まれないことをそっと祈った。

駐車場に無事戻り平湯の森で風呂に入り。MAが肉が食いたいというので焼き肉屋によって帰路についた。

今回、条件的にもパートナーにも恵まれ無事完登することが出来たことは嬉しくもあり感謝もしたい。

それでも自分自身の足らない事、弱い部分を露呈する結果になってしまったことも事実。
今回の経験を活かし鍛えなおしたいと思ったり思わなかったりw

今冬期の一つの目標は達成できたので残りの冬期はまったり過ごし、春の訪れを待とうと思う。こんな山行ばかりしていたら身も心も持たないのでwww


おしまい。

MAに甘え、呑ませてもらったビールはここ最近のなかで最高にうまかったw






























2024年8月17日土曜日

剱岳 チンネ左稜線

剱岳 山頂より

期日 2024/8/10~8/12
山域 北アルプス 剱岳 チンネ左稜線 (早月尾根~)
メンバー かず・たか・まぢこ

チンネに行きたい。今年こそは!

私にとって憧れの場所の一つである剱岳チンネ。
何年も前から計画する度に、台風の襲撃や大雨などで何度も計画倒れになってきた私にとって相性の悪い場所の一つだ。

そんなチンネだが今回やっと行くことができた。
予報では、アタック日の午後からの天候に少し不安はあったが実際に行ってみれば午後から多少ガスにまかれた程度で素晴らしい天候とロケーションの中まさにThe・Alpineを感じることのできる素晴らしい山行になった。

8/10 AM 3:00 名古屋発  AM7:00 馬場島着

上の駐車場はすでにいっぱいなのであきらめて一番下の駐車場に駐車。
大量のアブと闘いながら準備を済ませて7:40出発。

早月小屋には水場がないため各自余分に2㍑ずつ持つことにした。
この時点で私の荷物は、なぜか27㌔
ちなみにだが、まぢこ17㌔ たか25㌔

お約束の写真(まだ元気w)

本日は早月小屋まで。時間的には余裕があるのでのんびりスタートした。

歩き始めていきなりの急登。息が切れ、汗が吹き出さす。
流石は北アルプス3大急登だw。その後はしばらく傾斜が緩くなり、ちょうど良いタイミングで1ピッチ目が終わる。(ピッチ表記は山と高原地図のCTのポイント位置によるもの)
馬場島から早月小屋までは4ピッチだ。

写真中央のコルが三の窓

休憩しながら見える三の窓の遠さを改めて実感しながら先に進んだ。

暑い暑いと言いながら歩いているうちに2ピッチ目も終わる。

1600mm 地点にて

 この辺りを過ぎたころからタカの足がツリ始める。(もうすっかりお約束だなw)
今回は見ていて流石に可哀そうだったので荷物を少し持ってあげることにした。
私はロープを。まぢこは食材を。
この時点から私の荷物は30㌔弱、まぢこも20㌔ほどになった。
では、タカの荷物は?計算が得意な方ばかりではないかもしれないので一応正解を書いておこう。20㌔だ。

そして、この辺りから斜度が上がってくる。
タカと携帯電話がつながることを確認し私とまぢこは先に進むのでゆっくり上がってくるようにと言い残し先に進んだ。

じじいな私は当然だがまぢこもきつそうだ。それでも小屋まではあと半分と思い足を進める。

暑さと、重荷に息を切らせ苦痛に耐える。なんなら少し笑えてきた。

試練と苦痛 憧れは無しで

なんとか3ピッチ目も終わりに近づき小屋まで残すところ標高差で300mほどの辺りでタカが追い付いてきた。ずいぶん調子が良くなったようで私は嫌味も含めて「早いね」っと声をかけると嬉しそうな顔で「荷物軽いっす!」元気いっぱいに答えてきた。やはりポンコツ of  the ポンコツだ。

さっきもらった荷物を返してやろうかとも思ったのだが、また持たせて足がつられると鬱陶しいのでとりあえずそのまま先に進むことにしたが、私の事は良いとしても、まぢこに渡した分でさえもスルーしたタカには男として先輩としてのプライドはどうなっているのか今度会ったときにでも聞いてみようと思う。

そんなこんなで14:40 早月小屋到着。この暑さと荷物でこの時間ならまぁ良しとしておこうw

受付を済ませ幕営してビールを飲む。これだけ汗をかいた後なのでいつも美味いがいつも以上に美味く感じる。

少しだらだらした後、少々早めではあるが明日の出発時間が早いので夕食の準備をしてもらう。


本日の夕食はビーフシチューハンバーグご飯だった。

おいしかったです。

この日は流石に宴会はせずに19時前には就寝した。

8/11 0:00 起床

 先日の夕方から降っていた雨はやみ空には満点の星空が広がっていた。

朝食は食べる気がしないのでコーヒーだけ煎れて飲んだ。

なので朝食は各自のタイミングで行動食を取ることにした。

準備を済ませ予定通り1:00に早月小屋を出発した。

ひんやりとした空気と夜露で湿った緑の匂いが心地よく、月明りは無いが満点の星空に抱かれながら剱岳山頂を目指した。


山頂手前

4:15 剱岳山頂

まぢこ 剱岳初登頂

 チンネには室堂から入山し剱沢~長次郎谷~三の窓で行きたかったのだが、雪渓の具合がよく分からない(昨年の雪の少なさとこの暑さを考えれば良いわけがない)ので下手にそこでリスクと時間をかけるより、時間の読める早月からの方が良いのでは?っと今回早月から計画したのだが、まぢこ的には一番初めに剱岳の山頂を踏めたので良かったと思う。

北方稜線に入るには少し暗いため山頂でご来光を待ってから先に進むことにした。


『 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ 』

 岩に腰かけて暁色を帯び始めた東の空を見つめながら、たまたまちょっと知ってる百人一首をの一句を思い出したりして、「俺もなかなかに風流だな」などと自分に酔っていると山頂はすごい人になっていた。


剱岳山頂 出発前

 沢山の人を背に剱岳山頂を後にする。


北方稜線に入るとさっきまでの雑踏が嘘のように静かになる。
朝日に照らされた暁色の岩肌と谷から吹き上げる冷たい風が心地よい緊張感を誘う。


順調に歩を進め池の谷ガリーに入る。


ガリーを下れば三の窓、そこからチンネ左稜線取り付きはもう目と鼻の先だ。

、、、、、。

の、はずだったが流石はポンコツ!ここでやらかす。

なぜか勝手に三の窓手前で右側に見える踏み後に引っ張られルートを外れる。
終了点を見つけ嬉しくなりそれに引っ張られガレを登る。

そして我に返る。

ん?ちょっとまて。これってチンネ終了後の懸垂ルートじゃねぇ??

なぜこんなことになったのかは未だにわからないw

気を取り直し引き返しガリーに戻る。
今度はそのままガリーを素直に下る。やれやれ、8:00 三の窓に到着だ。
この時点で予定より1時間ほどの遅れだ。

この1時間の遅れが、今後の行程に大きく響くことになった事はこの時点ではまだ誰も知る由もなかった。

ネットでよく目にする一枚

 雪渓のトラバースは少しなのでアイゼンを履くかどうか迷うところだったがせっかく持ってきたことだし先行PTもいるので慌てて進んだところで待ちが長くなるだけなのでアイゼンを履いた。実際雪渓に乗ってみると意外に硬くよく滑った。

タカに借りたアイゼンを適当につけすぎて途中で外れる

取り付き手前で準備しながら順番待ちをした。

チンネ左稜線 1ピッチ目(トポ上2ピッチ目フェース40m Ⅳ) 9:45 スタート 

トポでは1ピッチ目 15m Ⅲとあるがこれは登らずテラスに取り付いた。
 ※今後のピッチ表記はトポに準ずる。


 私が2ピッチ目の終了点につくとでは先行PTのリードもまだそこにいて何やら様子がおかしかった。男性と女性の2人組のPTだが女性の方の体調がすぐれないようだ。
少し休憩して様子を見るとのことだったので先に行かせてもらった。

3ピッチ目 ロケーションが素晴らしい

たぶん3ピッチ目終了点

きっと4ピッチ目

おそらく5ピッチ目

6ピッチ目を登るまぢこだと思う

11:56 6ピッチ目終了点かな?

このタイミングで先行PT(3人組)に追いつく。

このPTに追いつくまでは順調で実際ここまでにかかった時間は2時間ほどだ。

残りのピッチ数は6つ。かかっても3時間くらいか?遅くても15:00にはトップアウトできるとこの時点では予想していた。

15:00トップアウトなら今の時期なら何とか日暮れ前には北方稜線は越え剱岳まで戻れると思っていた。

しかし、世の中はそんなに甘くもないし自分の思い通りにはならないものなのだ。
ここからが長い。長かった。

先行PTが遅々として進まない。我々よりも先に取り付いているのだから別に文句を言うつもりもないし、そんなことを言う資格も当然無い。そもそも悪いのは池ノ谷ガリーでルートを外しその間に先を越された我々なのだから。

7ピッチ目のはず?

きっと、ここら辺も7ピッチ目




13:30 核心手前 

なぜか1ピッチ進むのに1時間半もかかる。この辺りでいろんなことをあきらめる。
まぢこはお昼寝しだす。

チンネ左稜線 核心

この時点で14:20分。いったい何があったんだ?

小ハング越えの核心部は左側から抜けた。先行PTは右側から抜けていたが正解はどっちだろう。
だた、右側は残置が見当たらなく左側には2か所あった。

取り付く前は少し難しそうに見えるが実際はホールドも多く落ち着いてこなせばなんてことの無い場所だ。ただ高度感だけはすごいがw

核心部を越えた まぢこ

地獄から這い上がってきた人

たぶん10ピッチ目

もうよく分からないけど終わりらへん

この辺りから残りのピッチの写真がない。
もう。とにかく早く終わりたい。

そこから先も待って。待って。待って。待って。待って。17:30 トップアウト。
一体何時間待ったんだ?

しかし、さっきも書いたが先に取り付くことができなかった我々が悪い。
だから、我々はいつまでも待さ。例え日が暮れると分かっていても。

どうにかトップアウトして下山の準備にかかる。

一応25m3ピッチの懸垂とあるが初めの1ピッチ目はクラムダウンできるので我々は2ピッチ目から懸垂することにした。

ここでもいろいろあって(我々ではないが)待ち時間が長くなる。

18:13 やっと降りられる

ガレが酷いく先行者もいるためロープは投げずに持って懸垂する方が良い。

まぢこ懸垂中
ワンポイントアドバイス
懸垂2番手以降はロープの位置はなるべくそのままに懸垂すること。
特にこのような場所では。途中で勝手に降りるルートを変えロープを振ると落石を起こす。

最終懸垂ポイント(夕日で映える私w)

18:46 何とか池ノ谷ガリーまで戻ってきた。

夕日で映えるまぢこ

さて、改めてここからだ。
一応というか、最悪ビバークできる準備はあるが悩ましいところだ。

とりあえずガリーを登り返し乗越まで行く。
ああ、日が沈む。まだ沈まないでくれと祈る。それでも世の理は変わらない。
無情にも日は沈み辺りは闇に包まれていく。

私も含め全員が体力的にはまだ問題がないと判断し、三日月だが月明りもあるのでとりあえず剱岳を目指し北方稜線を進むことにする。

それでもやはり暗く先がわからないため行ってみて行き詰ることも何回かあったが何とか最後の本峰の登り返しまでたどり着いた。

あとは素直に登るだけだ。

20:42 本日2度目の山頂

何とか北方稜線を無事に越え本峰まで戻ってくることができた。
ここからは多少の岩場や悪路はあるが一般道だ。後は2時間半もあれば早月小屋に帰れる。

やれやれだ。

しかし、この安堵感が良くなかった。
山頂を後に下山を開始した直後に来る疲労感が凄まじい。一気に身体が重くなる。

まあ考えてみればこの時点での行動時間が20時間越えと思えばまだ動いている方か?

流石のまぢこも辛そうだ。持ち主の電池が切れる前にまぢこのヘッデンの充電が切れる。
タカはいつも辛そうなのでいつもと変わらない。ある意味強いなw

私が座ってるとまぢこが「今座ると立てなくなりそうなんで先に進んでもいいか」という。
「すぐに後を追うのでかまわない」と告げるとまぢこは先に進んでいった。

私もすぐに追いかけようと立ち上がり先に進むと鎖場になっているので鎖をつかんで降りようとするとすぐ横にあるもう一つの鎖を握って何故かまぢこが登ってきた。お互い目が合うとまぢこは不思議そうに「どこから来ました?」と聞く。

そんなまぢこに私は「どこに行くの?」っと聞き返す。

その鎖場はどうも登り用と下り用で2本張られていてペンキで矢印も書かれていた。
まぢこは降り切ったすぐ横にある上矢印に引きずられ登ってきたようだ。

まぢこ疲労のピークはきっとこの辺りだろう。

もしも、このタイミングで私に合わなければバターになるまでぐるぐるとこの場所を回っていたに違いない。

しかしこの出来事で笑いをもらい皆少し元気が出る。

小屋まであと標高差400m CT1時間、あと少しだ。だがこの1時間があり得ないほど長く感じた。

途中、何度か座り込むもなんとか進む。目の前に急にテントが現れる。

ついた、、、。

23:50 早月小屋 帰還。

行動時間 約23時間 私にとっても記録更新だw

当然だが小屋も閉まっているし水場もない。
テントに置いていったまぢこのプラティパスに残った水を3人で分けた。

配分された水は1人コップ1杯程度。下山の途中で水は尽き焼けた喉を潤すには少し足らなかったがそれでも生き返る。

そして、着替えも片付けも酒も飯も思い出話もすべてを投げ出し3人とも倒れる様に眠りについた。

8/12 6:30 起床

何もしたくないがコーヒーは飲みたい。

まぢこにコーヒーを煎れてもらいダラダラする。

朝食も作るのが面倒なので行動食の残りで済ます。

もっとダラダラしていたいのだが日が高くなるにつれ暑くてテントの中にいられなくなる。



あきらめて片付け始める


それでもあきらめずダラダラしようとする女

何時かはっきり覚えていないが9時前に早月小屋を後にする。

帰りはタカとまじこで共同装備を分担してくれて私の荷物がずいぶん軽くなり楽させてもらった。

あと一言だけ。
標高1800m付近で休憩していた年配の3人組の方に一言いいたい。
登山道の真ん中で椅子出して休憩するのはやめてください。とってもじゃまです。
その場で一言言おうかとも思ったのだが喧嘩になりそうな相手に見えたので辞めておいた。なぜなら今の私に残された気力と体力では小学生にも勝てる気がしないので。
気の弱い私とは違い、まぢこは強いので何か言っていたようだがw


12:40 馬場島到着。

馬場島には今回参加できなかったサトちゃんが出迎えてくれた。

デリカシーは無いが気はきくサトちゃんは馬場島には自販機がないので我々のためにクーラーボックスによく冷えたジュースを入れて持ってきてくれていた。

余談だが、下山途中で私が「サトちゃんきっと馬場島にジュース持って待ってってくれてるよ」っと言ったら、まぢこは「期待してしまうのでそんなこと言わないで下さい」っと言っていた。

無事下山

おまけ

 アタック日の行動時間が23時間だったことをサトちゃんに伝えたら「あ~行かなくてよかった!」っと嬉しそうに言っていた。


総評
ずっと憧れていたチンネに最高の仲間と最高の天気に恵まれ行けたことに先ずは感謝。

北方稜線に入ってからチンネを抜けるまでどこを見ても本当に素晴らしいロケーションだった。

トップアウトした時間は遅くなってしまったがそのおかげで夕日に染まる素晴らしい景色も見ることができた。

チンネ左稜線自体は特には難しい場所は無く終始快適なクライミングだった。
残置は豊富だがどれも古いので使い方には注意が必要だ。
カムは3番以下1セット持っていたが登攀中に使ったのは0.3くらいだ。
あとは終了点の補強で0.75を1回使った。

しかし暗闇の北方稜線は怖い。
そのせいもあってチンネ左稜線の登攀の記憶がかすんでしまった。

剱岳早月尾根・北方稜線 それぞれを目標にして頑張っている人も多いと思う。
そんなルートをアプローチと呼ぶ我々アルパインクライマーはやはりどこかイカレているのだろう。

今回も本チャンに来て、他のパーティーの動きを見て思うところはたくさんあった。
私も人の事をとやかく言う前に自身や仲間のやっていることが恥ずかしくないか今一度確認しようと思った。


おしまい。


帰りにサトちゃんに連れて行ってもらったお店で食べた白エビのかき揚げ丼































































あゝ、遥かなる屏風。

  期日 2026/9/21~23 山域 北アルプス 穂高連邦 屏風岩 雲稜 メンバー かず・タカ・まぢこ・篠原(犬) 序章 何年も前から、ずっと心のどこかにあった屏風。 何度も計画したが、そのたびに天気に阻まれてきた。 それでも、いつかは。 そう思い続けてきた。 そして今回、よ...