2024年8月17日土曜日

剱岳 チンネ左稜線

剱岳 山頂より

期日 2024/8/10~8/12
山域 北アルプス 剱岳 チンネ左稜線 (早月尾根~)
メンバー かず・たか・まぢこ

チンネに行きたい。今年こそは!

私にとって憧れの場所の一つである剱岳チンネ。
何年も前から計画する度に、台風の襲撃や大雨などで何度も計画倒れになってきた私にとって相性の悪い場所の一つだ。

そんなチンネだが今回やっと行くことができた。
予報では、アタック日の午後からの天候に少し不安はあったが実際に行ってみれば午後から多少ガスにまかれた程度で素晴らしい天候とロケーションの中まさにThe・Alpineを感じることのできる素晴らしい山行になった。

8/10 AM 3:00 名古屋発  AM7:00 馬場島着

上の駐車場はすでにいっぱいなのであきらめて一番下の駐車場に駐車。
大量のアブと闘いながら準備を済ませて7:40出発。

早月小屋には水場がないため各自余分に2㍑ずつ持つことにした。
この時点で私の荷物は、なぜか27㌔
ちなみにだが、まぢこ17㌔ たか25㌔

お約束の写真(まだ元気w)

本日は早月小屋まで。時間的には余裕があるのでのんびりスタートした。

歩き始めていきなりの急登。息が切れ、汗が吹き出さす。
流石は北アルプス3大急登だw。その後はしばらく傾斜が緩くなり、ちょうど良いタイミングで1ピッチ目が終わる。(ピッチ表記は山と高原地図のCTのポイント位置によるもの)
馬場島から早月小屋までは4ピッチだ。

写真中央のコルが三の窓

休憩しながら見える三の窓の遠さを改めて実感しながら先に進んだ。

暑い暑いと言いながら歩いているうちに2ピッチ目も終わる。

1600mm 地点にて

 この辺りを過ぎたころからタカの足がツリ始める。(もうすっかりお約束だなw)
今回は見ていて流石に可哀そうだったので荷物を少し持ってあげることにした。
私はロープを。まぢこは食材を。
この時点から私の荷物は30㌔弱、まぢこも20㌔ほどになった。
では、タカの荷物は?計算が得意な方ばかりではないかもしれないので一応正解を書いておこう。20㌔だ。

そして、この辺りから斜度が上がってくる。
タカと携帯電話がつながることを確認し私とまぢこは先に進むのでゆっくり上がってくるようにと言い残し先に進んだ。

じじいな私は当然だがまぢこもきつそうだ。それでも小屋まではあと半分と思い足を進める。

暑さと、重荷に息を切らせ苦痛に耐える。なんなら少し笑えてきた。

試練と苦痛 憧れは無しで

なんとか3ピッチ目も終わりに近づき小屋まで残すところ標高差で300mほどの辺りでタカが追い付いてきた。ずいぶん調子が良くなったようで私は嫌味も含めて「早いね」っと声をかけると嬉しそうな顔で「荷物軽いっす!」元気いっぱいに答えてきた。やはりポンコツ of  the ポンコツだ。

さっきもらった荷物を返してやろうかとも思ったのだが、また持たせて足がつられると鬱陶しいのでとりあえずそのまま先に進むことにしたが、私の事は良いとしても、まぢこに渡した分でさえもスルーしたタカには男として先輩としてのプライドはどうなっているのか今度会ったときにでも聞いてみようと思う。

そんなこんなで14:40 早月小屋到着。この暑さと荷物でこの時間ならまぁ良しとしておこうw

受付を済ませ幕営してビールを飲む。これだけ汗をかいた後なのでいつも美味いがいつも以上に美味く感じる。

少しだらだらした後、少々早めではあるが明日の出発時間が早いので夕食の準備をしてもらう。


本日の夕食はビーフシチューハンバーグご飯だった。

おいしかったです。

この日は流石に宴会はせずに19時前には就寝した。

8/11 0:00 起床

 先日の夕方から降っていた雨はやみ空には満点の星空が広がっていた。

朝食は食べる気がしないのでコーヒーだけ煎れて飲んだ。

なので朝食は各自のタイミングで行動食を取ることにした。

準備を済ませ予定通り1:00に早月小屋を出発した。

ひんやりとした空気と夜露で湿った緑の匂いが心地よく、月明りは無いが満点の星空に抱かれながら剱岳山頂を目指した。


山頂手前

4:15 剱岳山頂

まぢこ 剱岳初登頂

 チンネには室堂から入山し剱沢~長次郎谷~三の窓で行きたかったのだが、雪渓の具合がよく分からない(昨年の雪の少なさとこの暑さを考えれば良いわけがない)ので下手にそこでリスクと時間をかけるより、時間の読める早月からの方が良いのでは?っと今回早月から計画したのだが、まぢこ的には一番初めに剱岳の山頂を踏めたので良かったと思う。

北方稜線に入るには少し暗いため山頂でご来光を待ってから先に進むことにした。


『 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ 』

 岩に腰かけて暁色を帯び始めた東の空を見つめながら、たまたまちょっと知ってる百人一首をの一句を思い出したりして、「俺もなかなかに風流だな」などと自分に酔っていると山頂はすごい人になっていた。


剱岳山頂 出発前

 沢山の人を背に剱岳山頂を後にする。


北方稜線に入るとさっきまでの雑踏が嘘のように静かになる。
朝日に照らされた暁色の岩肌と谷から吹き上げる冷たい風が心地よい緊張感を誘う。


順調に歩を進め池の谷ガリーに入る。


ガリーを下れば三の窓、そこからチンネ左稜線取り付きはもう目と鼻の先だ。

、、、、、。

の、はずだったが流石はポンコツ!ここでやらかす。

なぜか勝手に三の窓手前で右側に見える踏み後に引っ張られルートを外れる。
終了点を見つけ嬉しくなりそれに引っ張られガレを登る。

そして我に返る。

ん?ちょっとまて。これってチンネ終了後の懸垂ルートじゃねぇ??

なぜこんなことになったのかは未だにわからないw

気を取り直し引き返しガリーに戻る。
今度はそのままガリーを素直に下る。やれやれ、8:00 三の窓に到着だ。
この時点で予定より1時間ほどの遅れだ。

この1時間の遅れが、今後の行程に大きく響くことになった事はこの時点ではまだ誰も知る由もなかった。

ネットでよく目にする一枚

 雪渓のトラバースは少しなのでアイゼンを履くかどうか迷うところだったがせっかく持ってきたことだし先行PTもいるので慌てて進んだところで待ちが長くなるだけなのでアイゼンを履いた。実際雪渓に乗ってみると意外に硬くよく滑った。

タカに借りたアイゼンを適当につけすぎて途中で外れる

取り付き手前で準備しながら順番待ちをした。

チンネ左稜線 1ピッチ目(トポ上2ピッチ目フェース40m Ⅳ) 9:45 スタート 

トポでは1ピッチ目 15m Ⅲとあるがこれは登らずテラスに取り付いた。
 ※今後のピッチ表記はトポに準ずる。


 私が2ピッチ目の終了点につくとでは先行PTのリードもまだそこにいて何やら様子がおかしかった。男性と女性の2人組のPTだが女性の方の体調がすぐれないようだ。
少し休憩して様子を見るとのことだったので先に行かせてもらった。

3ピッチ目 ロケーションが素晴らしい

たぶん3ピッチ目終了点

きっと4ピッチ目

おそらく5ピッチ目

6ピッチ目を登るまぢこだと思う

11:56 6ピッチ目終了点かな?

このタイミングで先行PT(3人組)に追いつく。

このPTに追いつくまでは順調で実際ここまでにかかった時間は2時間ほどだ。

残りのピッチ数は6つ。かかっても3時間くらいか?遅くても15:00にはトップアウトできるとこの時点では予想していた。

15:00トップアウトなら今の時期なら何とか日暮れ前には北方稜線は越え剱岳まで戻れると思っていた。

しかし、世の中はそんなに甘くもないし自分の思い通りにはならないものなのだ。
ここからが長い。長かった。

先行PTが遅々として進まない。我々よりも先に取り付いているのだから別に文句を言うつもりもないし、そんなことを言う資格も当然無い。そもそも悪いのは池ノ谷ガリーでルートを外しその間に先を越された我々なのだから。

7ピッチ目のはず?

きっと、ここら辺も7ピッチ目




13:30 核心手前 

なぜか1ピッチ進むのに1時間半もかかる。この辺りでいろんなことをあきらめる。
まぢこはお昼寝しだす。

チンネ左稜線 核心

この時点で14:20分。いったい何があったんだ?

小ハング越えの核心部は左側から抜けた。先行PTは右側から抜けていたが正解はどっちだろう。
だた、右側は残置が見当たらなく左側には2か所あった。

取り付く前は少し難しそうに見えるが実際はホールドも多く落ち着いてこなせばなんてことの無い場所だ。ただ高度感だけはすごいがw

核心部を越えた まぢこ

地獄から這い上がってきた人

たぶん10ピッチ目

もうよく分からないけど終わりらへん

この辺りから残りのピッチの写真がない。
もう。とにかく早く終わりたい。

そこから先も待って。待って。待って。待って。待って。17:30 トップアウト。
一体何時間待ったんだ?

しかし、さっきも書いたが先に取り付くことができなかった我々が悪い。
だから、我々はいつまでも待さ。例え日が暮れると分かっていても。

どうにかトップアウトして下山の準備にかかる。

一応25m3ピッチの懸垂とあるが初めの1ピッチ目はクラムダウンできるので我々は2ピッチ目から懸垂することにした。

ここでもいろいろあって(我々ではないが)待ち時間が長くなる。

18:13 やっと降りられる

ガレが酷いく先行者もいるためロープは投げずに持って懸垂する方が良い。

まぢこ懸垂中
ワンポイントアドバイス
懸垂2番手以降はロープの位置はなるべくそのままに懸垂すること。
特にこのような場所では。途中で勝手に降りるルートを変えロープを振ると落石を起こす。

最終懸垂ポイント(夕日で映える私w)

18:46 何とか池ノ谷ガリーまで戻ってきた。

夕日で映えるまぢこ

さて、改めてここからだ。
一応というか、最悪ビバークできる準備はあるが悩ましいところだ。

とりあえずガリーを登り返し乗越まで行く。
ああ、日が沈む。まだ沈まないでくれと祈る。それでも世の理は変わらない。
無情にも日は沈み辺りは闇に包まれていく。

私も含め全員が体力的にはまだ問題がないと判断し、三日月だが月明りもあるのでとりあえず剱岳を目指し北方稜線を進むことにする。

それでもやはり暗く先がわからないため行ってみて行き詰ることも何回かあったが何とか最後の本峰の登り返しまでたどり着いた。

あとは素直に登るだけだ。

20:42 本日2度目の山頂

何とか北方稜線を無事に越え本峰まで戻ってくることができた。
ここからは多少の岩場や悪路はあるが一般道だ。後は2時間半もあれば早月小屋に帰れる。

やれやれだ。

しかし、この安堵感が良くなかった。
山頂を後に下山を開始した直後に来る疲労感が凄まじい。一気に身体が重くなる。

まあ考えてみればこの時点での行動時間が20時間越えと思えばまだ動いている方か?

流石のまぢこも辛そうだ。持ち主の電池が切れる前にまぢこのヘッデンの充電が切れる。
タカはいつも辛そうなのでいつもと変わらない。ある意味強いなw

私が座ってるとまぢこが「今座ると立てなくなりそうなんで先に進んでもいいか」という。
「すぐに後を追うのでかまわない」と告げるとまぢこは先に進んでいった。

私もすぐに追いかけようと立ち上がり先に進むと鎖場になっているので鎖をつかんで降りようとするとすぐ横にあるもう一つの鎖を握って何故かまぢこが登ってきた。お互い目が合うとまぢこは不思議そうに「どこから来ました?」と聞く。

そんなまぢこに私は「どこに行くの?」っと聞き返す。

その鎖場はどうも登り用と下り用で2本張られていてペンキで矢印も書かれていた。
まぢこは降り切ったすぐ横にある上矢印に引きずられ登ってきたようだ。

まぢこ疲労のピークはきっとこの辺りだろう。

もしも、このタイミングで私に合わなければバターになるまでぐるぐるとこの場所を回っていたに違いない。

しかしこの出来事で笑いをもらい皆少し元気が出る。

小屋まであと標高差400m CT1時間、あと少しだ。だがこの1時間があり得ないほど長く感じた。

途中、何度か座り込むもなんとか進む。目の前に急にテントが現れる。

ついた、、、。

23:50 早月小屋 帰還。

行動時間 約23時間 私にとっても記録更新だw

当然だが小屋も閉まっているし水場もない。
テントに置いていったまぢこのプラティパスに残った水を3人で分けた。

配分された水は1人コップ1杯程度。下山の途中で水は尽き焼けた喉を潤すには少し足らなかったがそれでも生き返る。

そして、着替えも片付けも酒も飯も思い出話もすべてを投げ出し3人とも倒れる様に眠りについた。

8/12 6:30 起床

何もしたくないがコーヒーは飲みたい。

まぢこにコーヒーを煎れてもらいダラダラする。

朝食も作るのが面倒なので行動食の残りで済ます。

もっとダラダラしていたいのだが日が高くなるにつれ暑くてテントの中にいられなくなる。



あきらめて片付け始める


それでもあきらめずダラダラしようとする女

何時かはっきり覚えていないが9時前に早月小屋を後にする。

帰りはタカとまじこで共同装備を分担してくれて私の荷物がずいぶん軽くなり楽させてもらった。

あと一言だけ。
標高1800m付近で休憩していた年配の3人組の方に一言いいたい。
登山道の真ん中で椅子出して休憩するのはやめてください。とってもじゃまです。
その場で一言言おうかとも思ったのだが喧嘩になりそうな相手に見えたので辞めておいた。なぜなら今の私に残された気力と体力では小学生にも勝てる気がしないので。
気の弱い私とは違い、まぢこは強いので何か言っていたようだがw


12:40 馬場島到着。

馬場島には今回参加できなかったサトちゃんが出迎えてくれた。

デリカシーは無いが気はきくサトちゃんは馬場島には自販機がないので我々のためにクーラーボックスによく冷えたジュースを入れて持ってきてくれていた。

余談だが、下山途中で私が「サトちゃんきっと馬場島にジュース持って待ってってくれてるよ」っと言ったら、まぢこは「期待してしまうのでそんなこと言わないで下さい」っと言っていた。

無事下山

おまけ

 アタック日の行動時間が23時間だったことをサトちゃんに伝えたら「あ~行かなくてよかった!」っと嬉しそうに言っていた。


総評
ずっと憧れていたチンネに最高の仲間と最高の天気に恵まれ行けたことに先ずは感謝。

北方稜線に入ってからチンネを抜けるまでどこを見ても本当に素晴らしいロケーションだった。

トップアウトした時間は遅くなってしまったがそのおかげで夕日に染まる素晴らしい景色も見ることができた。

チンネ左稜線自体は特には難しい場所は無く終始快適なクライミングだった。
残置は豊富だがどれも古いので使い方には注意が必要だ。
カムは3番以下1セット持っていたが登攀中に使ったのは0.3くらいだ。
あとは終了点の補強で0.75を1回使った。

しかし暗闇の北方稜線は怖い。
そのせいもあってチンネ左稜線の登攀の記憶がかすんでしまった。

剱岳早月尾根・北方稜線 それぞれを目標にして頑張っている人も多いと思う。
そんなルートをアプローチと呼ぶ我々アルパインクライマーはやはりどこかイカレているのだろう。

今回も本チャンに来て、他のパーティーの動きを見て思うところはたくさんあった。
私も人の事をとやかく言う前に自身や仲間のやっていることが恥ずかしくないか今一度確認しようと思った。


おしまい。


帰りにサトちゃんに連れて行ってもらったお店で食べた白エビのかき揚げ丼































































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