2025年2月26日水曜日

錫杖岳 前衛峰 1ルンゼ


 期日 2025/2/22~24

山域 北アルプス 錫杖岳 前衛峰 1ルンゼ
メンバー かず・MA

昨年から狙っていた錫杖1ルンゼに行ってきました。
結果だけ見れば無事トップアウト。しかしながらパートナーMAの力は大きく、私の力不足を実感してしまう山行となった。

週が明け、アタック日が今週末に迫ってくると心がピリピリし始める。
仕事をしていても、飲んでいても、嫁に怒られているときでさえも気が付くと錫杖の事を考えている。
そして、TVを見ていても大寒波の事ばかりが目につき始める。これ以上私の事を不安にさせないでほしい。それでも、雪はこれ以上降ってほしくはないが冷え込むことは願ってもない事だ。

不安と期待が交差する少し情緒不安定な週を過ごしながら土曜日の朝をむかえた。

2025/2/22 AM6:00 
MAに家まで迎えに来てもらい出発。

9:30 駐車場着 出発。
この日はとりあえず幕営ポイントまでだが雪が多く厳しいラッセルになることも覚悟して入山したのだが新雪自体はそこまで多くもなく、ありがたいことにトレースもあり、せっかく準備してきたワカンと覚悟は無駄になった。

12:30 錫杖沢出会付近

渡渉ポイントは悪く、油断するとドボンしそうな雰囲気だ。
MAが先行する。「あ」あと少しのところでハマる。幸いなことに浸水は免れた。
私も続く。MAがハマった場所ではより一層の注意をしていたはずだが「あ」っとなる。
私も幸いなことに浸水は免れた。

渡渉点をこえて30分も歩くと前衛峰が見えてくる。
いつ見ても、雪と氷の鎧を纏った錫杖は美しくもあるが、その迫力と威圧感は圧巻だ。
そして今回挑戦する1ルンゼは峰を左右に分割するかのように一筋の美しい白線を氷で描き。我々を待っている様にも拒絶している様にもみえた。

この天に向かうかの様に垂直に伸びる白く美しい一筋のラインを一目見れば、このルートに憧れを感じないクライマーはいないのではないかと思うほどだ。

その美しさと迫力に呑まれないように気持ちを強く持ち、「俺たちなら絶対にやれる!」っとMAとお互いを鼓舞しあった。

13:00 岩小屋着。
すでに先行者が幕営していたのでもう少し先の適当な場所を切り出し幕営ポイントとした。
幕営の準備を済ませ、少し落ち着いてから偵察に向かった。
普段なら幕営の準備ができればすぐにでも呑みたい。いや。呑む私だが今回ばかりは呑むことより偵察に行きたいとさえ思ってしまった。

基部までトレースはあったがそこから1ルンゼに向かうトレースは無く距離にすれば短いが上部から落ちてくる雪もあり1ルンゼ取り付き直下では胸ほど沈む場所もあった。

取り付き手前

1ピッチ目

不安視していた1ピッチ目も実際に取り付いてみないと分からないことも多いがここからの見た目には氷と雪もついていてとりあえずはつながってはいる様に見えた。

1ルンゼの取り付き出だしの少しハングしていて困難になると予想していた部分は積雪が多く幸運なことに雪の下に隠れていた。

先行者もいたことで誰か取り付いているかと思っていたがこの日は誰も取り付いていないようだ、まだ誰も触れていない雪と氷が美しい線を描いている。できる事ならこのまま取り付きたい。
そう思っているとMAが「明日は絶対に1番で取り付きましょう」っと。やはり考えることは同じだ。

無事偵察も終え、明日への希望もつないだところで幕営地に戻った。
MAはお酒が飲めないので私だけMAの分まで頑張って呑むことにした。

MAとはもう何年も前から友人だがこうして2人きりでの幕営は初めてだった。
夕飯はMAが準備してくれた味噌鳥鍋を食べながら明日の登攀のことはもちろんだが、クライミングやアルパインについて、はては少し下世話な話など沢山の話をして盛り上がった。
とても楽しく素敵な時間だったが明日の朝は早いので20時には就寝とした。

2/23 アタック日
5時少し前に起床。いつものルーティーン通りコーヒーを沸かし飲む。
昨日の晩飯の残りに棒ラーメンを入れ食べ、準備を済ませて6時出発。
辺りはまだ暗くヘッデンの明かりと昨日つけたトレースを頼りに進んだ。

何故か取り付き基部で昨日つけたルートから外れラッセルしだすMA w

取り付きでガチャ等準備しザックも1つにまとめフォローが背負うことにした。
MAは煙草を吸わないが私は煙草を1本吸って右足から取り付くのがルーティーンなのでそれに付き合ってもらったw

私はアイスパートはあまり得意な方ではないので上部のバーチカルな部分はMAに依存したい。なので1ピッチ目のような泥臭い場所は私の方で処理するつもりだった。
そのことはもちろんMAと打ち合わせ済み。
さぁ、いよいよだ。
初めの一手、右手のバイルを振る。「こつん」っと岩にあたる。
「でしょうね」っと思いながら、それでもギリギリかかるので体を上げる。
左下の丸っこい岩の上部(写真1ピッチ目参照)に乗り込み右側の雪の詰まったルンゼに移ろうとバイルを振るとうっすら張った氷の上に雪が乗っているだけだったので全部なくなっる。「でしょうね」っとここでも思う。仕方がないのでほんの数メートルではあるが左右の壁を上手く使いドライでつなぐ。次の雪のついた細い溝部分に移る前にプロテクションが欲しいところ。0.3くらいのクラックもどきを見つけそこにリンクカムを効かせたいところだが上手く効まらない。何度か場所を調整しながら墜落に耐えられるかどうか不安はあったが一先ずは効いた事にして先に進む。
手も足も心さえも騙しながら攀る。そして下は見ないw。
とにかく絶対に落ちられない。この緊張感が初めは怖いのだがこの辺りから心地よくも感じ始めるから不思議だ。

傾斜が少し落ち着き1ピッチ目の終了点が近づくが夏の終了点はずっと左側にあるのでもちろん使えない。
スクリューで支点をつくりたいところだが氷が悪く使い物にならない。
ちょうど2ピッチ目の少し入ったところに岩が見えるのでとりあえずそこまでロープを伸ばすことに。MAからロープの残りがあと5mとコールが。

ロープギリギリでそこまでは行けたのだがその岩から支点は取られそうにない。ハーケンも打てそうにない。草付きが凍っていることを期待してイボイノシシを使うつもりで岩の横の雪をどかしてみると下から折れた木の根の部分が出てきた。「ラッキー」だ。
それを基本にイボイノシシを使い補強して支点とした。

MAのレアなフォロー写真w

2ピッチ目の残りはMAがリード。っというか3ピッチ目とそのままつなげて登攀。



この辺りから氷は安定しだした。そして、わかってはいたがどんどんバーチカルになってくる。

3ピッチ目

そして、4ピッチ目に。

氷の状態はおおむね良好だが、それでもどこでもよい訳ではないのでラインの選択が難しい。
それに何故かMAはより難しそうな場所、よりバーチカルな場所を好んで選ぶ。
なんならそこは少しかぶってないか? こんな場所まで来ても得意のおじさんいじめかw?

そもそもアルパインとはルートの弱点を見出し登攀するものなのでは?などと思っていても所詮はフォローなので登攀ラインの最終的な選択権は私には無いのだw

曇天の中だったがこのころから時折お日様が顔をみせてくれだす。

日の光に照らされると辺りは青く美しく輝きはじめ幻想的な世界に。それと同時に背中に感じる日の光の暖かさが心を癒してくれる。だがそれもつかの間、次の瞬間にはチリ雪崩が私を現実に引き戻してくれる。

無事4ピッチ目も終わり、おそらく5・6ピッチは繋げられるので次が最終ピッチになるだろう。

いよいよ次はこのルート核心部になる5ピッチ目の氷柱群に入る。

ここまでずっとハンギングビレイだったので、一度も休憩もしていない。ここもハンギングビレイではあるが核心部に備え一度一服することにした。
白湯がうまい。

5ピッチ目はラインが狭くビレイ点が氷のフォールラインから避けられない。
MAがバイルを振るたびに氷が降ってくる。なるべく直撃しないように体を左右に振りながらビレイする。時折耳元をビュンっという音とともに氷塊がかすめていく。

薄かぶり気味の氷柱群の氷は脆く悪い。スクリューの打数が増える。当然だ。気持ちもわかる。わかるのだが、、、。これをすべて回収しながらこの氷柱群を抜けるのは私にとっては骨が折れそうだ。

MAはチリ雪崩の攻撃さえも、ものともせずに魂のこもった熱い登攀を見せてくれる。
やはり強い!漢だ!私も泣き言など言っている場合ではない。

キッチリ抜けきりコールが。私の番だ。
フォローなのだが、場所が場所だけに(終了点の様子が分からないので)基本テンションはかけたくない。堕ちたくない。

連打されたスクリューを回収しながら攀じる。腕がきつくなってくる。
それでも何とかテンションをかけずに氷柱群の抜け口が見えてきた。
最後の乗越手前部分で身体を左に振りたく、右のバイルを右斜め上にかけ少しレイバック気味に引き左のバイルを振ろうとした瞬間。氷がはじけ飛んだ。「しまった」っと思った瞬間にはすでにロープにぶら下がっていた。止まった事には「ほっ」としたが次の瞬間にはここまで「ノーテンだったのに」っと私にしては珍しく思った。

もう、どうせぶら下がっているのだからっと割り切り少しレストさせてもらう。
上を見上げると左側の少し上にでかい雪庇が見え気持ち悪い。MAも同じことを言っていた。

最後は氷柱群を抜け左側の細い溝に身体を入れ雪庇の端をかすめながら体を上げる。
後は雪壁を少し登れれば終了点だ。

抜けた。やれやれだ。MAが笑顔で迎えてくれる。

本当は山頂まで行きたかったが、雪が多くラッセルになり雪崩も怖いので今回はここで終了することにした。


トップアウト出来たことの喜びを2人でかみしめ下山の準備に入る。
少し記憶があいまいだが確か5回の懸垂(残置終了点x2+アバラコフx3)で取り付きまで戻った。


  取り付きに戻ると他PTの方が偵察に来ていた。
1ピッチ目の出だしをみて「これ行ったんですか?」っと。するとMAが「僕のパートナーが行ってくれました!」っと私の肩に手を。もちろん私なんかよりはるかに強いMAだ。行けないわけがない。それでもその言葉は僕にとってはとても嬉しい一言だった。

いつまでも直下にいるのは危険なので早々に撤収。
疲労感はあったが心地よい。幕営地までは足取りも心も軽い。

幕営地まで無事帰還。
MAと握手しながら今回の成功を今思えば少しおかしなテンションで称えあったw。

直後にMAから「明日の左方カンテはやめておきましょうか?」っと
実は翌日は左方カンテなどという噂もあったが所詮は噂。
行くわけがない。行けるわけがない。私はw

MAは本当は少し行きたかったのかもしれないが左方カンテの取り付きを見る限り(一応は確認はしていた)1ルンゼのついでにやるレベルではない。っというのが私の意見だw
改めて一つの目標にし次回MAと行くことを約束し問題を先送りすることで今回は行かずに済んだwww

片付けも適当にテントに潜り込みビールを飲む。
緊張感から解放されて飲むビールは格別にうまい!

この日の晩飯はすき焼きだ!登攀の成功を祝うにはもってこいのメニューだw

MAが飲めないのは少しばかり残念だがお互いの登攀を褒め称えながら過ごした。
はたから見れば少しばかり気持ちの悪い光景だろうが今日だけは許してほしい。

終わったことの安堵感と疲労感で酔いのまわりも早く早々に眠くなる。
時間は覚えていないが明日は下山だけなので目覚ましもせずそのまま就寝した。

2/24 下山

目覚ましはしていないが6時少し前に起床。
コーヒーだけ飲んで朝食はパス。

バカ話をしながらボチボチ片付け撤収。
天気が良い。登攀の成功と青空が晴れやかな気分を誘う。


青空に浮かぶ前衛峰はとても美しいがこれが昨日だったらっと思うとぞっとする。
この日も数PTどこかを登っているようだが雪崩に巻き込まれないことをそっと祈った。

駐車場に無事戻り平湯の森で風呂に入り。MAが肉が食いたいというので焼き肉屋によって帰路についた。

今回、条件的にもパートナーにも恵まれ無事完登することが出来たことは嬉しくもあり感謝もしたい。

それでも自分自身の足らない事、弱い部分を露呈する結果になってしまったことも事実。
今回の経験を活かし鍛えなおしたいと思ったり思わなかったりw

今冬期の一つの目標は達成できたので残りの冬期はまったり過ごし、春の訪れを待とうと思う。こんな山行ばかりしていたら身も心も持たないのでwww


おしまい。

MAに甘え、呑ませてもらったビールはここ最近のなかで最高にうまかったw






























2024年8月17日土曜日

剱岳 チンネ左稜線

剱岳 山頂より

期日 2024/8/10~8/12
山域 北アルプス 剱岳 チンネ左稜線 (早月尾根~)
メンバー かず・たか・まぢこ

チンネに行きたい。今年こそは!

私にとって憧れの場所の一つである剱岳チンネ。
何年も前から計画する度に、台風の襲撃や大雨などで何度も計画倒れになってきた私にとって相性の悪い場所の一つだ。

そんなチンネだが今回やっと行くことができた。
予報では、アタック日の午後からの天候に少し不安はあったが実際に行ってみれば午後から多少ガスにまかれた程度で素晴らしい天候とロケーションの中まさにThe・Alpineを感じることのできる素晴らしい山行になった。

8/10 AM 3:00 名古屋発  AM7:00 馬場島着

上の駐車場はすでにいっぱいなのであきらめて一番下の駐車場に駐車。
大量のアブと闘いながら準備を済ませて7:40出発。

早月小屋には水場がないため各自余分に2㍑ずつ持つことにした。
この時点で私の荷物は、なぜか27㌔
ちなみにだが、まぢこ17㌔ たか25㌔

お約束の写真(まだ元気w)

本日は早月小屋まで。時間的には余裕があるのでのんびりスタートした。

歩き始めていきなりの急登。息が切れ、汗が吹き出さす。
流石は北アルプス3大急登だw。その後はしばらく傾斜が緩くなり、ちょうど良いタイミングで1ピッチ目が終わる。(ピッチ表記は山と高原地図のCTのポイント位置によるもの)
馬場島から早月小屋までは4ピッチだ。

写真中央のコルが三の窓

休憩しながら見える三の窓の遠さを改めて実感しながら先に進んだ。

暑い暑いと言いながら歩いているうちに2ピッチ目も終わる。

1600mm 地点にて

 この辺りを過ぎたころからタカの足がツリ始める。(もうすっかりお約束だなw)
今回は見ていて流石に可哀そうだったので荷物を少し持ってあげることにした。
私はロープを。まぢこは食材を。
この時点から私の荷物は30㌔弱、まぢこも20㌔ほどになった。
では、タカの荷物は?計算が得意な方ばかりではないかもしれないので一応正解を書いておこう。20㌔だ。

そして、この辺りから斜度が上がってくる。
タカと携帯電話がつながることを確認し私とまぢこは先に進むのでゆっくり上がってくるようにと言い残し先に進んだ。

じじいな私は当然だがまぢこもきつそうだ。それでも小屋まではあと半分と思い足を進める。

暑さと、重荷に息を切らせ苦痛に耐える。なんなら少し笑えてきた。

試練と苦痛 憧れは無しで

なんとか3ピッチ目も終わりに近づき小屋まで残すところ標高差で300mほどの辺りでタカが追い付いてきた。ずいぶん調子が良くなったようで私は嫌味も含めて「早いね」っと声をかけると嬉しそうな顔で「荷物軽いっす!」元気いっぱいに答えてきた。やはりポンコツ of  the ポンコツだ。

さっきもらった荷物を返してやろうかとも思ったのだが、また持たせて足がつられると鬱陶しいのでとりあえずそのまま先に進むことにしたが、私の事は良いとしても、まぢこに渡した分でさえもスルーしたタカには男として先輩としてのプライドはどうなっているのか今度会ったときにでも聞いてみようと思う。

そんなこんなで14:40 早月小屋到着。この暑さと荷物でこの時間ならまぁ良しとしておこうw

受付を済ませ幕営してビールを飲む。これだけ汗をかいた後なのでいつも美味いがいつも以上に美味く感じる。

少しだらだらした後、少々早めではあるが明日の出発時間が早いので夕食の準備をしてもらう。


本日の夕食はビーフシチューハンバーグご飯だった。

おいしかったです。

この日は流石に宴会はせずに19時前には就寝した。

8/11 0:00 起床

 先日の夕方から降っていた雨はやみ空には満点の星空が広がっていた。

朝食は食べる気がしないのでコーヒーだけ煎れて飲んだ。

なので朝食は各自のタイミングで行動食を取ることにした。

準備を済ませ予定通り1:00に早月小屋を出発した。

ひんやりとした空気と夜露で湿った緑の匂いが心地よく、月明りは無いが満点の星空に抱かれながら剱岳山頂を目指した。


山頂手前

4:15 剱岳山頂

まぢこ 剱岳初登頂

 チンネには室堂から入山し剱沢~長次郎谷~三の窓で行きたかったのだが、雪渓の具合がよく分からない(昨年の雪の少なさとこの暑さを考えれば良いわけがない)ので下手にそこでリスクと時間をかけるより、時間の読める早月からの方が良いのでは?っと今回早月から計画したのだが、まぢこ的には一番初めに剱岳の山頂を踏めたので良かったと思う。

北方稜線に入るには少し暗いため山頂でご来光を待ってから先に進むことにした。


『 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ 』

 岩に腰かけて暁色を帯び始めた東の空を見つめながら、たまたまちょっと知ってる百人一首をの一句を思い出したりして、「俺もなかなかに風流だな」などと自分に酔っていると山頂はすごい人になっていた。


剱岳山頂 出発前

 沢山の人を背に剱岳山頂を後にする。


北方稜線に入るとさっきまでの雑踏が嘘のように静かになる。
朝日に照らされた暁色の岩肌と谷から吹き上げる冷たい風が心地よい緊張感を誘う。


順調に歩を進め池の谷ガリーに入る。


ガリーを下れば三の窓、そこからチンネ左稜線取り付きはもう目と鼻の先だ。

、、、、、。

の、はずだったが流石はポンコツ!ここでやらかす。

なぜか勝手に三の窓手前で右側に見える踏み後に引っ張られルートを外れる。
終了点を見つけ嬉しくなりそれに引っ張られガレを登る。

そして我に返る。

ん?ちょっとまて。これってチンネ終了後の懸垂ルートじゃねぇ??

なぜこんなことになったのかは未だにわからないw

気を取り直し引き返しガリーに戻る。
今度はそのままガリーを素直に下る。やれやれ、8:00 三の窓に到着だ。
この時点で予定より1時間ほどの遅れだ。

この1時間の遅れが、今後の行程に大きく響くことになった事はこの時点ではまだ誰も知る由もなかった。

ネットでよく目にする一枚

 雪渓のトラバースは少しなのでアイゼンを履くかどうか迷うところだったがせっかく持ってきたことだし先行PTもいるので慌てて進んだところで待ちが長くなるだけなのでアイゼンを履いた。実際雪渓に乗ってみると意外に硬くよく滑った。

タカに借りたアイゼンを適当につけすぎて途中で外れる

取り付き手前で準備しながら順番待ちをした。

チンネ左稜線 1ピッチ目(トポ上2ピッチ目フェース40m Ⅳ) 9:45 スタート 

トポでは1ピッチ目 15m Ⅲとあるがこれは登らずテラスに取り付いた。
 ※今後のピッチ表記はトポに準ずる。


 私が2ピッチ目の終了点につくとでは先行PTのリードもまだそこにいて何やら様子がおかしかった。男性と女性の2人組のPTだが女性の方の体調がすぐれないようだ。
少し休憩して様子を見るとのことだったので先に行かせてもらった。

3ピッチ目 ロケーションが素晴らしい

たぶん3ピッチ目終了点

きっと4ピッチ目

おそらく5ピッチ目

6ピッチ目を登るまぢこだと思う

11:56 6ピッチ目終了点かな?

このタイミングで先行PT(3人組)に追いつく。

このPTに追いつくまでは順調で実際ここまでにかかった時間は2時間ほどだ。

残りのピッチ数は6つ。かかっても3時間くらいか?遅くても15:00にはトップアウトできるとこの時点では予想していた。

15:00トップアウトなら今の時期なら何とか日暮れ前には北方稜線は越え剱岳まで戻れると思っていた。

しかし、世の中はそんなに甘くもないし自分の思い通りにはならないものなのだ。
ここからが長い。長かった。

先行PTが遅々として進まない。我々よりも先に取り付いているのだから別に文句を言うつもりもないし、そんなことを言う資格も当然無い。そもそも悪いのは池ノ谷ガリーでルートを外しその間に先を越された我々なのだから。

7ピッチ目のはず?

きっと、ここら辺も7ピッチ目




13:30 核心手前 

なぜか1ピッチ進むのに1時間半もかかる。この辺りでいろんなことをあきらめる。
まぢこはお昼寝しだす。

チンネ左稜線 核心

この時点で14:20分。いったい何があったんだ?

小ハング越えの核心部は左側から抜けた。先行PTは右側から抜けていたが正解はどっちだろう。
だた、右側は残置が見当たらなく左側には2か所あった。

取り付く前は少し難しそうに見えるが実際はホールドも多く落ち着いてこなせばなんてことの無い場所だ。ただ高度感だけはすごいがw

核心部を越えた まぢこ

地獄から這い上がってきた人

たぶん10ピッチ目

もうよく分からないけど終わりらへん

この辺りから残りのピッチの写真がない。
もう。とにかく早く終わりたい。

そこから先も待って。待って。待って。待って。待って。17:30 トップアウト。
一体何時間待ったんだ?

しかし、さっきも書いたが先に取り付くことができなかった我々が悪い。
だから、我々はいつまでも待さ。例え日が暮れると分かっていても。

どうにかトップアウトして下山の準備にかかる。

一応25m3ピッチの懸垂とあるが初めの1ピッチ目はクラムダウンできるので我々は2ピッチ目から懸垂することにした。

ここでもいろいろあって(我々ではないが)待ち時間が長くなる。

18:13 やっと降りられる

ガレが酷いく先行者もいるためロープは投げずに持って懸垂する方が良い。

まぢこ懸垂中
ワンポイントアドバイス
懸垂2番手以降はロープの位置はなるべくそのままに懸垂すること。
特にこのような場所では。途中で勝手に降りるルートを変えロープを振ると落石を起こす。

最終懸垂ポイント(夕日で映える私w)

18:46 何とか池ノ谷ガリーまで戻ってきた。

夕日で映えるまぢこ

さて、改めてここからだ。
一応というか、最悪ビバークできる準備はあるが悩ましいところだ。

とりあえずガリーを登り返し乗越まで行く。
ああ、日が沈む。まだ沈まないでくれと祈る。それでも世の理は変わらない。
無情にも日は沈み辺りは闇に包まれていく。

私も含め全員が体力的にはまだ問題がないと判断し、三日月だが月明りもあるのでとりあえず剱岳を目指し北方稜線を進むことにする。

それでもやはり暗く先がわからないため行ってみて行き詰ることも何回かあったが何とか最後の本峰の登り返しまでたどり着いた。

あとは素直に登るだけだ。

20:42 本日2度目の山頂

何とか北方稜線を無事に越え本峰まで戻ってくることができた。
ここからは多少の岩場や悪路はあるが一般道だ。後は2時間半もあれば早月小屋に帰れる。

やれやれだ。

しかし、この安堵感が良くなかった。
山頂を後に下山を開始した直後に来る疲労感が凄まじい。一気に身体が重くなる。

まあ考えてみればこの時点での行動時間が20時間越えと思えばまだ動いている方か?

流石のまぢこも辛そうだ。持ち主の電池が切れる前にまぢこのヘッデンの充電が切れる。
タカはいつも辛そうなのでいつもと変わらない。ある意味強いなw

私が座ってるとまぢこが「今座ると立てなくなりそうなんで先に進んでもいいか」という。
「すぐに後を追うのでかまわない」と告げるとまぢこは先に進んでいった。

私もすぐに追いかけようと立ち上がり先に進むと鎖場になっているので鎖をつかんで降りようとするとすぐ横にあるもう一つの鎖を握って何故かまぢこが登ってきた。お互い目が合うとまぢこは不思議そうに「どこから来ました?」と聞く。

そんなまぢこに私は「どこに行くの?」っと聞き返す。

その鎖場はどうも登り用と下り用で2本張られていてペンキで矢印も書かれていた。
まぢこは降り切ったすぐ横にある上矢印に引きずられ登ってきたようだ。

まぢこ疲労のピークはきっとこの辺りだろう。

もしも、このタイミングで私に合わなければバターになるまでぐるぐるとこの場所を回っていたに違いない。

しかしこの出来事で笑いをもらい皆少し元気が出る。

小屋まであと標高差400m CT1時間、あと少しだ。だがこの1時間があり得ないほど長く感じた。

途中、何度か座り込むもなんとか進む。目の前に急にテントが現れる。

ついた、、、。

23:50 早月小屋 帰還。

行動時間 約23時間 私にとっても記録更新だw

当然だが小屋も閉まっているし水場もない。
テントに置いていったまぢこのプラティパスに残った水を3人で分けた。

配分された水は1人コップ1杯程度。下山の途中で水は尽き焼けた喉を潤すには少し足らなかったがそれでも生き返る。

そして、着替えも片付けも酒も飯も思い出話もすべてを投げ出し3人とも倒れる様に眠りについた。

8/12 6:30 起床

何もしたくないがコーヒーは飲みたい。

まぢこにコーヒーを煎れてもらいダラダラする。

朝食も作るのが面倒なので行動食の残りで済ます。

もっとダラダラしていたいのだが日が高くなるにつれ暑くてテントの中にいられなくなる。



あきらめて片付け始める


それでもあきらめずダラダラしようとする女

何時かはっきり覚えていないが9時前に早月小屋を後にする。

帰りはタカとまじこで共同装備を分担してくれて私の荷物がずいぶん軽くなり楽させてもらった。

あと一言だけ。
標高1800m付近で休憩していた年配の3人組の方に一言いいたい。
登山道の真ん中で椅子出して休憩するのはやめてください。とってもじゃまです。
その場で一言言おうかとも思ったのだが喧嘩になりそうな相手に見えたので辞めておいた。なぜなら今の私に残された気力と体力では小学生にも勝てる気がしないので。
気の弱い私とは違い、まぢこは強いので何か言っていたようだがw


12:40 馬場島到着。

馬場島には今回参加できなかったサトちゃんが出迎えてくれた。

デリカシーは無いが気はきくサトちゃんは馬場島には自販機がないので我々のためにクーラーボックスによく冷えたジュースを入れて持ってきてくれていた。

余談だが、下山途中で私が「サトちゃんきっと馬場島にジュース持って待ってってくれてるよ」っと言ったら、まぢこは「期待してしまうのでそんなこと言わないで下さい」っと言っていた。

無事下山

おまけ

 アタック日の行動時間が23時間だったことをサトちゃんに伝えたら「あ~行かなくてよかった!」っと嬉しそうに言っていた。


総評
ずっと憧れていたチンネに最高の仲間と最高の天気に恵まれ行けたことに先ずは感謝。

北方稜線に入ってからチンネを抜けるまでどこを見ても本当に素晴らしいロケーションだった。

トップアウトした時間は遅くなってしまったがそのおかげで夕日に染まる素晴らしい景色も見ることができた。

チンネ左稜線自体は特には難しい場所は無く終始快適なクライミングだった。
残置は豊富だがどれも古いので使い方には注意が必要だ。
カムは3番以下1セット持っていたが登攀中に使ったのは0.3くらいだ。
あとは終了点の補強で0.75を1回使った。

しかし暗闇の北方稜線は怖い。
そのせいもあってチンネ左稜線の登攀の記憶がかすんでしまった。

剱岳早月尾根・北方稜線 それぞれを目標にして頑張っている人も多いと思う。
そんなルートをアプローチと呼ぶ我々アルパインクライマーはやはりどこかイカレているのだろう。

今回も本チャンに来て、他のパーティーの動きを見て思うところはたくさんあった。
私も人の事をとやかく言う前に自身や仲間のやっていることが恥ずかしくないか今一度確認しようと思った。


おしまい。


帰りにサトちゃんに連れて行ってもらったお店で食べた白エビのかき揚げ丼































































錫杖岳 前衛峰 1ルンゼ

 期日 2025/2/22~24 山域 北アルプス 錫杖岳 前衛峰 1ルンゼ メンバー かず・MA 昨年から狙っていた錫杖1ルンゼに行ってきました。 結果だけ見れば無事トップアウト。しかしながらパートナーMAの力は大きく、私の力不足を実感してしまう山行となった。 週が明け、アタッ...