2024年2月20日火曜日

仙丈ケ岳 地蔵尾根 



 期日 2024/02/17 

山域 南アルプス 仙丈ケ岳 地蔵尾根

メンバー Wan子・Yr子・Mj子・Kazu 計4名


 それは、正月気分も抜け日常の生活に戻りつつある、ある日の夜から始まった。

その日は、いつものメンバーで新年会という名目での飲み会。

もちろん、たいして為になる話をするわけでもなく、くだらないバカ話で盛り上がる。

そんななか、Wan子の口からこぼれた一言が私の耳にとまった。

「仙丈ケ岳、地蔵尾根日帰りピストンへ女子3人で」っとの計画だった。

なんとなく、そのまま話を聞いていると「一緒にどうですか?」と。

女の子3人に囲まれて行く南アルプスの女王!なんて楽しそうな計画!

この時の私に断る理由があるわけもなく。

もちろん、即答で「行くっす」「参加させてください」となる。

当日、なんとなくの詳細は聞いたのだが、女の子3人と行くことくらいしか酔った私の脳みそは記憶していなかった。

後日、その話を思い出し、軽い気持ちで情報を調べ愕然とした。

往復約25km・累計標高差約2400m・予定行動時間14時間(しかも無雪期で)

更に前日の睡眠時間はナシというおまけつきだ。

うん。うん。私には絶対無理。一応、心の友であるDにも確認はした。

Dからの回答も「うん。やめときな」だった。

 そこから、私は行けない理由を必死で探したのが大義名分を満たすものが見つからない。それでも、彼女達の山行計画は私の意思とは無関係に、しかも確実に進んでいった。

 余談だが、大義名分が見つからない大きな理由として天気が悪い場合はゲレンデスキーが予定されていたからだった。

千丈には行きたくないが、スキーには行きたい。

この下心が私の中にある限り、私に大義名分が与えられることはないだろう。

そんな私に残されたことは当日の天気が悪いことを全力で神に祈ることくらいだった。

2024/2/17 天候 私の祈りは通じず晴れ。この世に神はいない。

 16日 22:30 名古屋を出発。車での移動中はWan子からのおじさんへの配慮があり、1時間ほどの仮眠をとらせてもらった。

 Dからは「もしも登れなかった時の言い訳の一つになるから絶対に前日は寝てはいけない。」と、教えてはもらってはいたのだが小心者の私は不安に耐え切れず目を閉じてしまった。

 17日 2:30 柏木登山口 出発。

出だしは雪も少なくなだらか林道なのでWan子の先導でペースよく進む。

歩き出して1時間が過ぎたあたりで私はあることに気づいた。「この人たち休憩は?」

それから1時間。やっと休憩の指示がでた。

このあたりから私の中で、可愛いかったはずのWan子が鬼に見えてきた。

今思えば、そもそもこの計画を立てた時点で鬼であったことに気が付くべきだった。

月明りもない暗く長い林道は私には終わりが見えず永遠に続いている様に感じた。

それでも開けない夜はない。終わりのない林道も。東の空が少しずつ白く輝き始めたころに松峰小屋の分岐に到着した。


6:20 松峰小屋分岐

 ここから先は大小いくつものピークを越え進む。先ず目指すは2700mあたりの稜線。

積雪量もこの辺りから次第に増え、斜度も急激に強くなってくる。しかもほぼ直登だ。

急登感がこの写真では伝わらいのが悔しい


 薄らとトレースはあるが、場所によっては膝下ほどのラッセルも交えながら進む。

目指す稜線 2700mラインの手前200mくらいの位置で完全にトレースが消える。 


 人様のトレースを借りておいて言う事ではないが、トレースの位置が悪くそのまま先には進めない。

一旦少し戻りなるべく傾斜の緩い場所を選んで登り返すことにした。

予想外のラッセルに多少の時間と体力は消費したが無事に稜線までは到達することができた。

稜線には乗ったがその先もまだ長い。晴れ予報だったはずの天気もそのころから徐々に悪くなり視界も急激に悪くなっていった。

時間的にも体力的にも登頂できるかはギリギリだ。撤退するべきか判断するポイントはここだった。

だが、今回私はリーダーではないので、その判断は彼女達に委ねる。

そして、出された彼女達の判断は時間の許す限り行けるところまで。

登頂できるかどうかはわからないが時間の許す限り挑戦をあきらめない。

もしも今回の山行をいつもの倶楽部のメンバーで挑戦していたなら、トレースがなくなった時点で考える間もなく撤退していただろう。

彼女たちの熱いスピリットを当然だが私も含め倶楽部のポンコツ共にも見習ってもらいたいと心底思った瞬間だった。


地蔵尾根は一般道のはずなのだが、稜線上はルートを示す物は見当たらなかった。
視界の悪い中、ルーファイしながら先へ進む。

私は進みながらも心のどこかで撤退のタイミングを考えていた。きっと彼女達も。

そう思っていたのだが、ここからMj子が突如豹変した。

自ら先頭を志願しガンガン攻める。もう誰も彼女を止められない。
その後ろ姿には必ず登頂するという強い意志を感じた。

後続を気にしてこちらを振り返って確認してくれてはいるが、私には「早く来い!」という圧力にしか見えなかった。
(この意見については下山時に確認済)本人は否定していたが他2名は私に同意。

それでも、その勢いと圧力に引かれパーティーは前進する。

偽ピークをあと2つ越えれば、女王のもとへ。そう信じて。



、、、、、。


厳冬期 仙丈ケ岳 3033m (地蔵尾根)

今年に限れば内容的には雪も少なく技術的な難易度は低いのだろう。
それでも、この長いルートを多少とはいえラッセルをこなしONE DAYでやり切った感動はある。

ついでに言うと、私に限っては恥ずかしながら、仙丈ケ岳は初登頂。

今回のお誘いがなければこの場所に来ることは無かったと思う。

山行前は天気が悪くなり、山行が中止になって行先が「ほのぼのゲレンデスキー」になることを切に願っていたのだが、結果的にはここに来られて本当によかったと思う。と同時にここへは二度と来ることはないだろうと来られたこと以上に強く思ったことは私だけの秘密だ。

山頂は風も強く、飛んでくる氷雪は顔を突く。

証拠写真を撮り、余韻に浸る事もなく帰路に。

ホワイトアウト気味の天候の中、方角を確認しながら自分達のトレースを探す。
山頂から2700m地点までは尾根が広く分かりにくい。

風も強く、時間も気になるところだが、ここは焦らず、しっかりと確認し進むべき方角に向かった。



 無事、安全圏まで戻り、登頂の喜びを分かち合う。

出し切った感がw

しかし、本当の地獄はここからだった。

2700m地点から柏木登山口までおおよそ、6時間。

それでも、帰らないわけにはいかないので惰性で歩く。
下山だけだと思いきや、当然、登り返しが疲れた身体を更に追い込む。

Mj子の電池が切れた感がすごい。
Yr子はもう何も話さない。話したくない。

Wan子は?なぜかここにきて、復活する。
ついていかないと怒られそうな勢いなので必死でついていく。ついてはいけないが。

「まだ~」、「あとどれくらい~」 もう、私の口からはこの言葉しか出ない。

そして、そのうち日も暮れる。


ごまかし、ごまかしでなんとか駐車場にたどり着く。時刻は19:40分
実に、行動時間17時間。ホントよく頑張った。特に私が。

駐車場に戻ると、突然ハッピーバースデイを歌わさせられる。
せっかくなので全力で歌うつもりだったのだが、疲労で声がでない。

駒ヶ根まで戻り、ギリギリで温泉に滑り込み前日のお昼にDと行った気がするガストで遅めの夕食を食べ帰路に着いた。

Mj子が車の中で「今日の山行で余分なお肉が落ちた気がする。」っと言っていたがそれは気のせいなのでご心配なく。と、しっかりと伝えておいた。

Wan子、帰りの運転ありがとう。そしてお疲れ様でした。
耐え切れなくなり途中意識不明になった私をお許しください。

 
 久しぶりの歩きの登山は長い、とにかく長かった。時間も尾根も林道も行きも帰りも。

山行前は若い彼女達に着いて行くことが出来ず、私のせいで敗退になる事が本当に不安だった。それは、こんな私にも「ノミ」ほどではあるがプライドがあるからだ。

今でも無事に達成できた事にほっとしている。

結果、「まだまだ若い者には負けてない」などと、じじくさい言葉を最後に今回の山行記録を〆させてもらう。













































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